田口優里は「療養」のために入院すると言ったものの、彼女の病室にはまだ数人の患者がいて、外来診療日には再診の患者もいた。
そのため、野井北尾は本来なら床に横になって休むべき田口優里が、患者の治療をしたり外来診療に出勤したりするのを目の当たりにした。
彼は焦りを感じたが、自分から田口優里に会いに行けば怒らせてしまうのではないかと恐れ、仕方なく曽田広和を訪ねた。
野井北尾が転院して漢方科に来たのは、確実に曽田広和の同意を得てのことだった。
野井北尾の病状は漢方科とは何の関係もなかったが、彼には人脈があり、そして彼と田口優里は夫婦だった。
曽田広和のような年齢になると、自然と「仲を取り持つべきで、別れさせるべきではない」という考えになり、田口優里に少し諭した。
田口優里はただ一言、「私は医者だから、自分の体のことは自分がよく分かっている」と言った。
何度か、野井北尾は自分の病室のドアの前に立ち、通り過ぎる田口優里を見ていた。
田口優里はまっすぐ前を見て、彼に気づいていないふりをした。
野井北尾は彼女を怒らせるのを恐れ、近づく勇気が出なかった。
しかし彼女の健康を心配していたので、毎日時間通りに栄養たっぷりの食事を用意させ、果物が冷たすぎるのではないかと心配して、フルーツティーや飲み物にして彼女に届けさせた。
それだけでなく、田口優里の病室の花も毎日新しいものに取り替えられた。
上品で高貴なシャンパンローズが、まだ露を帯びた状態で届けられた。
田村若晴は勤務を終えると病室に来て田口優里に付き添い、感心して言った。「こう見ると、この男も捨てたものじゃないわね」
田口優里はそれを聞いて微笑むだけだった。
田村若晴はさらに言った。「彼の肩を持つわけじゃないけど、客観的に見ての話よ」
「前はまだ三井和仁の味方だったじゃない?」
田村若晴は黙り込んだ。
田口優里は不思議そうに尋ねた。「どうしたの?」
田村若晴は言った。「いや、前は彼のことをあなたから聞いただけだったけど、あの日彼を見て...」
田口優里はまばたきをして「それで?」と促した。