田口優里は「療養」のために入院すると言ったものの、彼女の病室にはまだ数人の患者がいて、外来診療日には再診の患者もいた。
そのため、野井北尾は本来なら床に横になって休むべき田口優里が、患者の治療をしたり外来診療に出勤したりするのを目の当たりにした。
彼は焦りを感じたが、自分から田口優里に会いに行けば怒らせてしまうのではないかと恐れ、仕方なく曽田広和を訪ねた。
野井北尾が転院して漢方科に来たのは、確実に曽田広和の同意を得てのことだった。
野井北尾の病状は漢方科とは何の関係もなかったが、彼には人脈があり、そして彼と田口優里は夫婦だった。
曽田広和のような年齢になると、自然と「仲を取り持つべきで、別れさせるべきではない」という考えになり、田口優里に少し諭した。
田口優里はただ一言、「私は医者だから、自分の体のことは自分がよく分かっている」と言った。