十月に研修に行くことが分かっていたので、田口優里は新しい患者を受け入れていなかった。
病棟に入院している患者たちの治療も一段落していた。
植物状態だった藤原浩一はすでに退院していた。
田口優里が時間を見つけて書いていた論文もほぼ完成していた。
野井北尾はここ数日、彼女をただ静かに見守るだけで、邪魔をしに来ることはなかった。
しかし田口優里を困らせたのは、彼女が怪我をした日から毎日昼になると、三井和仁が人に頼んで昼食を届けさせるだけでなく、野井北尾も同じことをしていたことだった。
田村若晴は彼女に頑固だと言った。「何が困るの?食べたいものを食べればいいじゃない。食べきれなかったら科の看護師たちに分けてあげれば。」
三井和仁の方は、彼がどんな性格か、田口優里はよく知っていた。