第155章 楽しく語り合う

河井孝志は松下牧野がどういう身分か知っていたが、それでも田口優里が騙されることを心配していた。

そのため、田口優里が松下牧野と食事に行くことを知ると、彼はとても心配そうに言った。「優里ちゃん、前に言ったこと、全部忘れたの?」

「お金持ちには良いものがない——忘れてないわ」田口優里は診療記録を書き、河井孝志にサインするよう渡した。「安心して、あなたが考えているようなことじゃないから」

河井孝志はサインしながら言った。「そういえば、私も松下晴彦の主治医なのに、なぜ私を招待しないんだろう?」

田口優里は笑いながら説明した。「実は松下さんは母の友人で、言ってみれば私の目上の人なんです」

河井孝志はとても驚いた。「そうだったのか、なるほど」

松下牧野は東京では誰もが知る大富豪だったが、多くの人は彼の名前を聞いたことがあるだけで、どんな顔をしているか知らなかった。

河井孝志は元々松下牧野に良い印象を持っていた。

男は風格があり、背が高くハンサムだった。

見た目はまだ40歳にも満たないようだった。

河井孝志は本当に田口優里が彼に惹かれることを恐れていた。

結局、松下牧野はあまりにも優秀すぎたから。

今、松下牧野と田口優里の母が友人だと知って、彼もようやく安心した。

仕事が終わった後、田口優里は松下牧野の車に乗った。

松下牧野は彼女を見る目に慈愛の色が混じっていた。「優里は好きな料理のジャンルはある?」

田口優里は微笑んだ。「私は好き嫌いはないんです」

「それはいいね」

彼の記憶の中のあの少女は、とても好き嫌いが激しかった。

とても痩せていた。

腰は細かった。

田口優里のような体型の方がいい。

頬にはちょっと肉がついている。

見ているとつい摘みたくなる。

田口優里は東京の地元の人ではなかったので、松下牧野は自分がよく行くレストランに彼女を連れて行った。

味は良く、会員制で、値段も非常に高かった。

入ると、チャイナドレスを着た気品のある女性スタッフが直接エレベーターまで案内し、個室へと通した。

客のプライバシーは最大限に保護されていた。

個室に入ると、松下牧野は田口優里に何を飲みたいか尋ねた。

田口優里は妊娠中で、お酒はもちろん、飲み物さえも飲まなかった。

普段は豆乳とフルーツジュースしか飲まなかった。