第154章 過ぎたるは及ばざるが如し、自分のことは自分で考えなさい

野井北尾の心に喜びが芽生えた。

田口優里が彼を二階に上がらせたことは、間違いなく良い兆候だった。

しかし、階段を上がり、部屋に入って二人が席に着くと、田口優里の最初の言葉は「あなたが約束を守らない人だとは思わなかった」だった。

野井北尾は一瞬固まった。

田口優里はさらに言った。「私たちが以前約束した一年間、あなたは同意したはずよ」

二人の一年の約束を思い出し、野井北尾は数秒間黙り込んだ。

田口優里は続けた。「約束を守ってほしいの。できる?」

彼女は相談するような口調で話したが、その冷たい眼差しは野井北尾に明確に伝えていた。もし彼ができないなら…

彼は脱落することになる。

野井北尾は重々しく口を開いた。「僕も約束を守りたい。でも…怖いんだ」

彼は顔を上げて彼女を見つめ、その目には後悔と自責の念が満ちていた。「優里ちゃん、過去に僕は多くの間違いを犯した。君に許してもらおうなんて思わない。でも、少なくともチャンスをくれないか」

「不安になる気持ちがこんなにつらいものだとは知らなかった」

「求めても得られない苦しみがこれほどのものだとも知らなかった」

「優里ちゃん、僕は待つことができる。でも怖いんだ…君が他の人と一緒になってしまうのが」

「優里ちゃん…」

言い終えると、彼は熱い視線で田口優里を見つめた。「本当に怖いんだ。こんなに怖いと思ったことはない…」

田口優里は一度目を閉じ、すぐにまた開いた。「今のところ、そういう考えはないわ。つまり、あなただけでなく、他の人にもチャンスを与えるつもりはないの」

「わかってる。でも安心できないんだ」野井北尾の目には葛藤が見えた。「君を信じていないわけじゃない。ただ三井和仁が虎視眈々と…」

そして田口優里が密かに思いを寄せている人物のことも。

どちらも野井北尾の心の中の時限爆弾だった。

いつ爆発するかわからない。

「今は仕事に集中しているの。他のことは考えていないわ」田口優里は言った。「あなたのそういう態度は、私を困らせるだけよ」

「ごめん…」

野井北尾の言葉が終わらないうちに、彼の携帯電話が鳴った。

彼は一瞥してすぐに切り、再び田口優里を見た。「毎日君に食事を届けるだけでいい?」

「東京病院の食堂の食事はとても良いわ。食べたいものを注文できるし」

野井北尾の携帯電話がまた鳴った。