田口優里は午前中に腫瘍外科に行かなければならなかった。手術で彼女の協力が必要だったのだ。
しかし手術が半ばに差し掛かったとき、患者が突然不整脈を起こし、心室細動に陥り、皆が不意を突かれた。
積極的に薬物治療で救命を試みたが、一つには患者が70代であったこと、さらに腹腔が開かれた状態で手術が進行中であり、出血もあったことが、状況をさらに悪化させた。
患者を救命する際の雰囲気は厳粛で、誰もが緊張感を持っていた。手術室には医師の指示と看護師がそれを復唱する声だけが響いていた。
あとは機器の耳障りな警報音だけだった。
結局、患者は救命できなかった。
田口優里は救命に参加しようとしたが、側にいた看護師が彼女を引き止めた。「田口先生、行かないでください。もし何かあったら、患者さんの家族があなたを責めますよ。」