「私がどこに寝るかはあなたに関係ないでしょう?」野井北尾も譲らなかった。「あなたは患者なのに、ここで指図する権利があるの?」
「私が患者だとして、あなたが私よりましだとでも?」
「少なくとも私は...」野井北尾は心虚ろに田口優里を見て、それから言った。「少なくとも友達だ」
「異性の友達が厚かましく人の家に住み着くなんて聞いたことないわ」
「もういいわ」田口優里は小学生のような二人の幼稚な言い争いを遮った。「ソファは開くから、ベッドと同じよ」
野井北尾もそもそも田口優里のベッドで寝るつもりはなかった。
冗談じゃない、今は手すら握れないのに。
ベッドで寝ることなど望めるはずがない。
夢の中の方が早い。
田口優里は野井北尾にソファを開かせ、予備の寝具を取りに行った。
幸い部屋には床暖房があり、半袖でも寒くなかった。