第213章 まさかこんなことをするなんて

福の神様は自覚がなく、昼になって松下牧野からの電話を見て、少し考えてから、彼に折り返した。

「優里ちゃん、今日の仕事は大丈夫?」松下牧野は尋ねた。「誰かに何か言われた?」

田口優里は彼がこのことで電話してきたのだろうと察した。どう言われようと、相手は確かに自分を心配してくれているのだ。

田口優里は言った。「大丈夫です。みんな私に優しくしてくれています」

「それはよかった」松下牧野は言った。「何かあったら叔父さんに言いなさい。辛い思いをしないで、わかった?」

田口優里の叔父たちは皆、優里に対して非の打ち所がないほど優しかった。

しかし叔父たちの性格は、どれも寡黙なタイプだった。

田口優里には心から優しく、車や家や宝石をプレゼントするのに、まばたきひとつしない。

ただ、優しい言葉をかけるのは苦手だった。