第213章 まさかこんなことをするなんて

福の神様は自覚がなく、昼になって松下牧野からの電話を見て、少し考えてから、彼に折り返した。

「優里ちゃん、今日の仕事は大丈夫?」松下牧野は尋ねた。「誰かに何か言われた?」

田口優里は彼がこのことで電話してきたのだろうと察した。どう言われようと、相手は確かに自分を心配してくれているのだ。

田口優里は言った。「大丈夫です。みんな私に優しくしてくれています」

「それはよかった」松下牧野は言った。「何かあったら叔父さんに言いなさい。辛い思いをしないで、わかった?」

田口優里の叔父たちは皆、優里に対して非の打ち所がないほど優しかった。

しかし叔父たちの性格は、どれも寡黙なタイプだった。

田口優里には心から優しく、車や家や宝石をプレゼントするのに、まばたきひとつしない。

ただ、優しい言葉をかけるのは苦手だった。

しかし松下牧野は違う。

田口優里への気遣いと愛情は、行動だけでなく、言葉でも表現していた。

彼は非常に率直な人だった。

人に優しくするのに、遠回しなことはしない。

「ありがとうございます」

「そんなに堅苦しくしなくていいよ」松下牧野は言った。「今夜一緒に食事できる?驚きを和らげるために」

「いえ、結構です…」

「野井北尾のことを話したいんだ」

田口優里は黙っていた。

「優里ちゃん、昔から言うだろう、年長者の言うことを聞かないと、すぐに痛い目を見ると。私は本当に君のためを思って…」

「松下叔父さん、本当にありがとうございます」田口優里は彼の言葉を遮った。「私と野井北尾のことは、私自身で処理します」

「君が知らないことがたくさんあるんだ」松下牧野は言った。「彼に騙されるのが心配なんだ」

「私が知らないことなんてないと思います」

松下牧野は直接言った。「野井北尾と三井和仁が喧嘩しそうだけど、知ってる?」

田口優里はびっくりした。「何ですって?」

松下牧野は言った。「野井北尾と三井和仁が何か話し合いがあるみたいだけど、険悪な雰囲気で、喧嘩になりそうだよ。知ってた?」

田口優里は彼らがどこにいるのか尋ね、電話を切るとすぐに急いで向かった。

野井北尾は確かに三井和仁を探しに行っていた。

彼は澤田耀司から得た手がかりを追っていくと、この一連の出来事には三井和仁の関与があることがわかった。