小林也子は野井北尾という息子に対して少しの愛情も持っていなかった。
しかし彼女は野井家に対して恨みを抱いているとは言えなかった。
当時、家族に結婚を強いられたが、野井家でなくても鈴木家か浅岡家だったはずだ。
野井家の条件は最も良かった。
それに、最初のうちは義父は彼女に対して悪くはなかった。
ただ今では、その良さはとうに消え去っていた。
小林也子は自分が何も間違ったことをしていないと思っていた。
野井由紀もそんな性格ではないか?
家に帰らず、子供の面倒も見ず、一日中外で女遊びをし、浮気ばかりしている。
なぜ野井由紀はそうしていいのに、彼女はダメなのか?
今はどんな時代だ、男女はとっくに平等になっている。
この夫婦に対して、今や義父は誰も好ましく思っていない。
しかし小林也子が帰国し、本家に来たからといって、彼女を追い出す道理はない。
野井北尾と田口優里が到着したとき、小林也子はちょうど義父とリビングでお茶を飲んでいた。
ただ純粋にお茶を飲んでいるだけで、茶盤の上に置かれたカップからは既に湯気が消えていた。
部屋の中はとても静かだった。
雰囲気はあまり和やかではなかった。
「優里ちゃんが帰ってきたのか?」野井義敏は田口優里を見て、顔に少し笑みを浮かべた。「早くおじいちゃんのところに来なさい」
小林也子は何気なく田口優里を一瞥した。
彼女は義父が田口優里にこれほど優しいとは思っていなかった。
先ほど言うべきこと、言うべきでないことを全て言ったのに。
しかし義父の態度は泰山のように安定し、表情を変えることなく、彼女の言葉に対して何も言わなかった。
しかし小林也子は知っていた、義父は彼女の言葉を信じていないことを。
少なくとも全部は信じていない。
野井北尾は冷たく小林也子を一瞥し、その目には警告と警戒心が込められていた。
田口優里は義父の隣に座った。「おじいちゃん、ごめんなさい、こんなに長い間帰ってこなくて」
野井北尾は昨晩急いで買ったものを脇に置いた。「優里ちゃんがおじいちゃんに買ってきたものです」
それは東京のいくつかの軽食で、高価ではないが、とても繊細で美味しかった。
「私はもう長い間東京に行っていないから、ちょうどこういうお菓子が食べたかったんだ」義父は目を細めて笑った。「やはり優里ちゃんは気が利くね」