第252章 彼氏です

田口優里はここ数日、仕事は平穏だった。

外科の方の問題はすでに処理され、腫瘍外科の主任が彼女を支持してくれており、いくつかの手術では、田口優里もまだ手伝いに来ていた。

田口義守がどうなったか、田口優里は気にしていなかった。

彼女が結婚して3年、田口義守が彼女に言ったすべての言葉は、野井北尾に取り入り、へつらい、野井家の若奥様としてふさわしく振る舞えというものだけだった。

彼女が野井北尾との結婚生活の中で、辛い思いをしているか、何か困っていることがあるかなど、田口義守は一度も尋ねたことがなかった。

氷が三尺凍るのは一日にしてならず。

田口優里が完全に心を閉ざしたのも、一度や二度のことで起きたわけではなかった。

田口義守は亀山由美の遺体が冷たくなる前に二見玲香一家を家に連れてきた。

今や、田口艶子までもが野井北尾に別の思いを抱いていた。

田口優里は聖母ではなく、彼らを何度も何度も許し、容認することはできなかった。

野井北尾のやり方について、田口優里はもちろん推測できた。彼は自分を支え、怒りを晴らしてくれていたのだ。

田口優里が心を柔らかくして、野井北尾の好意を無駄にするだけでなく、亀山由美も棺桶の蓋を押さえきれないほど怒るだろう。

田口優里はそれまで彼らと争わないようにしていた。

ここ数年は、お互いに干渉しないようにしていた。

しかし田口艶子が野井北尾に手を出したことについて、彼女は確信していた。これは田口艶子一人の考えではないと。

少なくとも二見玲香が背後で彼女を支持しているはずだ。

二見玲香自身が不倫相手となり、道徳的に堕落していた。

今や田口艶子も親の背を見て子は育つという状態だった。

二見玲香はおそらく自分のような考え方を美しい伝統だと思い、代々受け継がせたいと考えているのだろう。

価値観がどうしてこんなにも歪んでしまったのか分からない。

墨都を離れるのも良いだろう。今後は目に入らなければ心も煩わない。

田口敏子からも電話はなかった。

田口優里が不思議に思ったのは、この数日、三井和仁からも何の動きもなかったことだ。

おそらく彼女と野井北尾が復縁したことを知って、まだ受け入れられないのだろう。

しかし田口優里は彼の足だけが心配だった。

彼女は上尾剛に電話をかけ、三井和仁の足の状態について尋ねた。