田口義守は田口優里から電話がかかってきたのを見て、とても喜んだ。田口敏子の言葉が効いたのだと思った。
しかし電話に出ると、田口優里が別荘を売る気はないかと尋ねてきた。
田口義守は激怒した。「田口優里、何のつもりだ!」
「文字通りの意味よ。売るなら買うわ」と田口優里は言った。「汚れているけど、掃除すれば大丈夫。結局は私のお母さんが住んでいた場所だから」
「田口優里!」田口義守はさらに怒った。「わざとやっているのか?田口家が破産して、お前に何の得がある!」
「田口家が国に匹敵するほど裕福でも、私には何の得もないわ」と田口優里は言った。「まさか、あなたの財産に私の取り分があるとでも?」
もちろんない!
たとえ田口優里が自分の血を引いていても、田口義守は彼女に何も与えるつもりはなかった。
ましてや彼女は違う!
しかし、そんなことは言えなかった。
「私の財産に、お前の分がないわけがないだろう?」田口義守は口調を和らげた。「お前は私の娘だ。私のものは、当然お前にも分け前がある」
「そう、そうなの」
田口義守はこれを聞いて、チャンスだと思った。「もちろんだ」
「いらないわ、寄付して」と田口優里は言った。「あなたが私の代わりに寄付する?それとも私が自分でする?」
田口義守は一瞬、聞き間違えたかと思った。「何だって?」
「あなたのお金はいらないって言ったの」と田口優里は言った。「私はお母さんの分だけが欲しい」
これを聞いて田口義守はさらに怒った。
亀山由美はとっくに遺言を残しており、彼女の死後、彼女名義の財産はすべて直接田口優里に譲渡されていた。
田口義守は一銭も手に入れられなかった。
二見玲香がこれを知ると、嫉妬で目が赤くなった。
彼女は亀山由美がそんなにお金持ちだとは思っていなかった。
田口義守よりもずっと裕福だった。
「誰だってお金が多すぎるとは思わないだろう」田口義守は何とか怒りを抑えた。「お前と野井北尾はこれから子供も欲しいだろう。お前が要らないなら、子供のことを考えろよ」
「そんなことを心配するより、墨都を離れてどんなビジネスをするか考えた方がいいわ」
田口優里はそう言って電話を切った。
田口義守は怒りで飛び上がり、携帯電話を投げつけた。