老婦人は慌てふためき、どこを探しても松下牧野の姿が見つからなかった。
鈴木真珠はハッと気づいた。「監視カメラよ!」
松下牧野はホテルで怒り心頭だった。「何をしようとしているんだ!鈴木真珠、今手に持っていたのは何だ?」
鈴木真珠は頭を上げて辺りを見回すと、確かに黒々とした監視カメラを見つけた。
彼女はすぐにカメラに向かって口を開いた。「お兄さん!誤解しないで!これは...栄養剤よ!体にいいものなの!」
「信じるわけないだろう?」松下牧野は怒りに震えた。「すぐに出て行け!出て行けと言っているんだ、聞こえないのか!」
老婦人がまだ何か言おうとしたが、鈴木真珠は床に落ちたものを拾い上げ、彼女を引っ張って逃げ出した。
松下牧野は介護人が入ってくるのを見て、やっと車のキーを掴むと足早に部屋を出た。
老婦人と鈴木真珠は慌てて逃げ出し、車に乗り込んでから、老婦人はようやく尋ねた。「どうなってるの?」
「私に分かるわけないでしょ!」鈴木真珠も相当驚いていた。「病室に監視カメラがあるなんて!」
監視カメラは松下牧野が設置させたもので、機器は彼のもう一台の携帯電話に直接接続されており、いつでも松下晴彦の状態を観察できるようになっていた。
これは介護スタッフの同意を得た上で、松下牧野が設置したものだった。
明日は松下晴彦が目覚めるかどうかの重要な日で、松下牧野はもともと監視カメラを見ながらぼんやりしていた。
しかし思いもよらず、老婦人と鈴木真珠が何かコソコソとしようとしているのを目撃してしまった。
彼らが何をしようとしていたのかは分からなかったが、介護スタッフを追い出し、鈴木真珠が経鼻チューブに何かを注入しようとしていたのは、正常なことだろうか?
もし鈴木真珠が普段から松下晴彦の世話をしていたのなら、まだ話は分かる。
しかし鈴木真珠は経鼻チューブに触れたことすらなく、以前病室に入った時も、ベッドから1メートル以内に近づいたことさえなかった!
突然このようなことをするなんて、バカでも異常だと分かるだろう!
松下牧野は、松下晴彦が自分の実子ではないという事実が明るみに出れば、家族が何か考えるだろうということは分かっていた。
しかし、老婦人が松下晴彦に手を下すとは、どうしても想像できなかった!