第293章 男の劣根性

「最初、私が由美と結婚したのは、確かに私が身分不相応だった。」

「でも結婚してから初めて知ったんだ、由美の心の中には...私なんて全くいなかったってことを。」

「彼女の心にはずっと誰かがいて、でもその男に裏切られたから、私と結婚したんだ。」

「優里ちゃんが生まれた後、彼女は...私に触れさせなくなった。私だって普通の男だ、君も男なら分かるだろう。」

「仕方なく、外で女を作ったんだ。」

「私が外に女がいることを、彼女も知っていた。」

「言ってみれば、このことも彼女が黙認していたようなものだ。」

「みんな私が浮気して彼女を裏切ったと思っているが、実は彼女の心に別の男がいて、先に精神的な浮気をしていたんだ。」

田口義守が話し終えると、野井北尾は冷たい目で彼を見た。「話は終わりか？」

田口義守は言った。「事実はそういうことだ。この数年間、優里ちゃんが私をひどく誤解していたが、彼女の母親の印象を守るために、ずっと黙っていた。まさか今日こんなことになるとは思わなかった。」

「自分がとても不当な扱いを受けていると思っているのか？」野井北尾は嘲笑した。「亀山家がもたらした便宜を享受したのなら、何かを犠牲にするのは当然だ。亀山家に頼って金持ちになり、最後には自分の浮気に完璧な言い訳まで見つけた。彼女の精神的な浮気を受け入れられないなら、離婚すればよかったじゃないか。」

田口義守が離婚できることを知らないはずがない。

しかし彼はまったく離婚したくなかった。

亀山家の婿という身分がもたらす恩恵を享受していて、当然離れたくなかった。

離婚は彼にとって、利益より害の方が大きかった。

彼がそんなに馬鹿なわけがない。

浮気しておきながら言い訳をする。

確かに厚かましい限りだ。

この世のすべての良いことを一人占めしようとしている。

田口義守は気まずそうに笑った。「当時の状況では、離婚するのも難しかった。会社が上場したばかりで、離婚すれば影響が出る。」

野井北尾は彼とこれ以上話したくなかった。直接言った。「他のことは言わなくていい。ただ言ってくれ、君のところにまだどれだけの遺品があるのか。」