第309章 松下家の門に入るなど思うな

老婦人は雷に打たれたかのように、唇を動かしながらも、しばらくの間、一言も発することができなかった。

彼女は胸に手を当て、濁った目を不満げに見開き、その表情は恐ろしいほど醜悪に見えた。

鈴木真珠は彼女のこんな醜い一面を見たことがなかった。

結局のところ、長年にわたり、老婦人は自分の身分を誇りにし、もはや昔の田舎くさい農村の女性ではなくなっていた。

笑い話のようだが、彼女自身は小さな家の出身で、後に松下家の事業が大きくなるにつれて、彼女も良い暮らしをするようになった。

良い生活が長く続くと、彼女は自分も苦労し、努力した過去を忘れ、お金持ちの奥様のように振る舞い、お茶を嗜み、花を生け、精進料理を食べ、仏を拝むようになった。

長年にわたり、松下牧野は松下家の財産を何倍にも増やしてきた。

松下牧野の母親として、彼女も当然ながら人々から尊敬されるようになった。

お世辞と追従に浮かれ、ますます自分の身分が高貴だと思うようになった。

しかし実際には、彼女が一生かけても学べないものがあった。

表面的な偽装は簡単に剥がれ、本当の姿が露わになった。

鈴木真珠は彼女のその様子を見て、松下牧野が彼女に似ていなくて良かったと思うほどだった。

本当に醜かった。

老婦人は自分の表情をまったくコントロールできなかった。

長年、他人の前では高貴で優雅だと自負していた。

しかし彼女は辛辣で、意地悪で、利己的だった。

それは骨の髄まで染み付いた本性だった。

鈴木真珠の言葉を聞いたとき、彼女の心の衝撃は言葉では表現できないほどだった。

亀山由美は、彼女が最も嫌う女性だった、例外なく!

亀山由美がいなければ、彼女と松下牧野の関係はこれほど悪化していなかっただろう。

松下牧野もこれほど長い間独身でいることはなかっただろう!

そして今!

松下晴彦が松下牧野の息子ではないというのだ!

つまり、松下牧野はあの女のために、進んで松下家の血筋を絶やそうとしていたのだ。

それに、彼女が二人の仲を裂いたと責めるのか?

亀山由美が本当に誠実に松下牧野と付き合っていたのなら、なぜ身分を隠す必要があったのか?

結局、すべての過ちは亀山由美にあった。

亀山由美のせいで、彼女と松下牧野は今日のような関係になってしまったのだ。