第401章 私は出産マシンではない

野井北尾が出て行ってからそう経たないうちに、田村若晴がやって来た。

田口優里はこっそり運動していたところを中断され、彼女に笑いかけた。「忙しいなら、わざわざ私を見に来なくていいのよ」

「勘違いしないでよ」田村若晴はすでにコートを脱ぎ、中にはシルクのブラウスを着ていて、彼女の美しいスタイルを引き立てていた。「私は娘に会いに来たのよ」

彼女は手を洗ってから赤ちゃんを抱いた。

二人とも医者だから、赤ちゃんにとって何が良いかを知っている。

多くの親は赤ちゃんの頬や口にキスするのが好きだ。

実はこれはとても危険なことだ。

いくつかのウイルスは、このような接触を通じて、赤ちゃんに感染する可能性がある。

特に大人の口に水疱などができている場合は。

さらに危険だ。

だから家族の誰も赤ちゃんの口にキスすることはほとんどない。

しかし正直言って、赤ちゃんがかわいいと、どうしてもキスしたくなる。

田村若晴は我慢に我慢を重ねたが、結局我慢できずに赤ちゃんの頬にキスした。

「はぁ」田口優里はため息をついた。「今や私の地位は、昔ほどではなくなったわね」

「何を考えているの。あなたは私の中では、そもそも地位なんてないわよ」と田村若晴は言った。「私はあなたに娘を産んでもらうことだけを期待してるのよ」

田口優里は笑いが止まらなかった。「冗談ばっかり」

しかし田村若晴は真剣な表情で言った。「本気よ。優里ちゃん、あなたと野井北尾の遺伝子はすごくいいわ。もう一人産んだら？」

田口優里は言った。「この子がまだお宮参りもしていないのに、もう次の子のことを考えてるの？」

田村若晴は彼女を見つめた。「つまり、あなたは野井北尾との子どもを産むことに抵抗はないってこと？」

田口優里は一瞬固まった。

田村若晴はさらに言った。「最近よく考えるの、もしこのことが私の身に起きたら、私はどうするだろうって」

田口優里は苦笑した。「甘子、私はあなたほど度量が大きくないわ。私って実は、すごく小心者なの」

「バカ言わないで」と田村若晴は言った。「あなたはただ彼のことをとても大事に思っているだけよ。大事に思えば思うほど、つらくなる。私が気にしないのは、単に私がある人やある出来事を心に留めていないからよ」

田口優里は黙っていた。