第402章 あなたは彼女に生きる道を与えないと決めたのね

田口優里は言った。「おそらく、まだ処理が終わっていないのでしょう。」

松下牧野は時計を見て言った。「こんなに長いのか？」

「彼をお探しですか？」

「いや、特に用事はないんだ。ただ、毎日私の前をうろついていたのに、突然こんなに長く姿を見せないと、少し慣れないな。」

田口優里は笑いそうになった。「赤ちゃんを抱く争いの相手がいなくなって、喜ぶべきではないですか。」

「もうすぐ夕食だからな。」松下牧野は言った。「電話して、彼がまだ帰ってくるのか聞いてくれないか？」

彼は赤ちゃんを抱きながら付け加えた。「彼が私と争う？彼に私に勝てるわけがないだろう？」

義父が娘婿を見る目は、姑が娘婿を見るように、見れば見るほど好きになるというわけではない。

田口優里は、この二人の間には何となく敵意のようなものがあると感じていた。

二人とも田口優里に良くしようと競い、赤ちゃんの世話を焼こうと競い、相手を打ち負かそうと必死だった。

しかし、ここは松下牧野の縄張りであり、野井北尾は年下の立場だったため、何度も負けて、どうすることもできなかった。

田口優里は、この家には月嫂（産後ケア専門の家政婦）やベビーシッターは必要なく、この二人の男性だけで彼女と赤ちゃんをとても良く世話できると感じていた。

野井北尾が人の世話をするのが上手いことは、この数ヶ月間で田口優里は身をもって体験していた。

彼女は、松下牧野がこれほど細やかで思いやりがあるとは思っていなかった。

田口優里は知らなかったが、松下牧野のこの経験は以前亀山由美の世話をしていた時に得たものだった。

亀山由美は彼にとても良く世話をされ、口まで食べ物を運んでもらうほどだった。

そして松下牧野はそれを喜んでしていた。

亀山由美の世話をすることで、彼も幸せを感じていた。

今、彼は愛する人の世話をする機会はもうないが、彼の目には、田口優里は彼と愛する人の命の延長線上にあるものだった。

彼は愛する人を世話する情熱をすべて田口優里に注いでいた。

松下牧野の言葉を聞いて、田口優里は野井北尾に電話をかけた。

彼女も本当に心配していた。野井北尾に何かあるとは思わないが、こんなに長く帰ってこないと、やはり色々と考えてしまう。

相手はすぐに電話に出て、野井北尾の低く磁性のある声が響いた。「優里ちゃん。」