第445章 蛇蝎の心

亀山敦も聞こえた。「誰が外にいるの？何があったの？」

松下牧野は急いで立ち上がり、外に向かった。

「お父さん！」

松下牧野の足が止まった。

野井北尾が階段を降りてきた。「わかってる、僕が行くよ」

彼がそう言ったので、松下牧野はもう動かなかった。

亀山敦が尋ねた。「大丈夫？何か喧嘩してるみたいだけど？」

野井北尾は言った。「大丈夫だよ、僕が対処する」

ドアの外にいたのは、二見玲香だった。

さっき、野井北尾と田口優里が階段を上がったとき、田口優里の携帯が鳴った。

彼女の仕事は特殊で、以前は病院では電源を切ることができなかった。

田口優里もどんな電話でも出る習慣がついていた。

今回の着信は見知らぬ番号からだったが、彼女は出た。

ただ、彼女は思いもよらなかった。電話をかけてきた人が、なんと二見玲香だったとは！

二見玲香と言えば、田口優里は当然彼女が好きではなかった。

ましてや、この数年間、二見玲香はレベルが高く、大きな白蓮の花を演じていた。

田口義守の前では、いつも優しく話し、細やかな気配りをしていた。

田口義守がいなくなると、やっと本性を現した。

彼女が最も得意としていたのは、一見無実に見える言葉を言いながら、何度も田口優里を陥れることだった。

それに比べると、田口艶子のレベルははるかに低かった。

しかし、この二人がどんな人であろうと、田口優里は全く気にしなかった。

彼女たちがどれほど悪意を持ち、意地悪をし、さらには田口優里は彼女たちの目に明らかな嫉妬と計算を見ることができた。

でもそれがどうした。

田口優里は彼女たちを全く眼中に入れていなかった。

田口優里はとても穏やかな性格の人だった。

彼女はほとんど誰とも敵対することがなかった。

この人生で嫌いな人は、おそらく田口義守の家族三人だけだった。

彼女は二見玲香から電話がくるとは思っていなかった。

田口義守との関係を断ってから、二見玲香は彼女の世界からさらに遠ざかっていた。

彼女には、二見玲香が自分に電話をする理由が思い浮かばなかった。

お金を借りるのだろうか？

結果として、電話がつながるとすぐに、二見玲香は言った。「田口優里！あなたは私たちの艶子をどこに連れて行ったの！」

田口優里は呆然とした。