第446章 笑い者

田口艶子はまだあの会員制クラブにいた。

以前は彼女がどうしても手が届かず憧れていたこのクラブに、今では必死に逃げ出そうとしていた。

しかし、このような場所は、華やかな外見の下に、より権力を誇示する場所でもある。

表に出せないものはすべて、ここで育ち繁栄する。

田口艶子はあらゆる手段を尽くしたが、最後には疲れ果てるだけだった。

それでも出ることができず、誰とも連絡が取れなかった。

部屋には何でもあり、日が暮れると、誰かが夕食を持ってきた。

田口艶子は狂ったように外に飛び出そうとしたが、押し戻された。

そして再びドアが閉まった。

どれだけドアを叩いても、外からは反応がなかった。

彼女が静かになってようやく、ドアの外から声がした。「三井さんとどう話すか、よく考えなさい。考えがまとまらないなら、そのまま中にいなさい」

「これは不法監禁よ!」

しかし、もう誰も相手にしなかった。

田口艶子は絶望し始めた。

彼女は初めて、天に叫んでも応えなく、地に叫んでも反応がない味を経験した。

彼女は私生児で、母親は愛人、父親は幼い頃からそばにいなかったが、実際には物質的な生活で不自由したことはなかった。

二見玲香に甘やかされて育てられたのだ。

いつも彼女が人をいじめる側で、田口優里でさえ、優しく気にしない性格だった。

彼女は甘やかされ慣れていて、自分がこんな日を迎えるとは思ってもみなかった。

彼女は後悔した。

三井和仁を訪ねるべきではなかった。

三井和仁のような人間は、彼女には手に負えない存在だった。

いや違う、三井和仁はそもそも人間ではない!

普通の人なら、彼のように会ったとたんに人を殴ったりしない。

しかも彼女は女の子なのに。

しかし、田口艶子は考え直した。このような狂人が田口優里を好きなのは、必ずしも悪いことではないかもしれない。

もしかしたら、三井和仁は田口優里にも同じように接するかもしれない。

そう考えると、田口艶子はすぐに心の均衡を取り戻した。

ひょっとすると、三井和仁が田口優里を好きだということで、野井北尾が田口優里を誤解するかもしれない。

そうなれば二人は離婚し、三井和仁と田口優里が一緒になり、田口優里は間違いなく三井和仁に苦しめられるだろう。

そこまで考えると、田口艶子は笑いそうになった。