第469章 私たちは別れました

二見玲香の処刑の日、皆は亀山由美の墓前に集まった。

大きな恨みが晴れたが、誰一人として笑顔を浮かべることができなかった。

二見玲香が百回死んだところで何になるだろう。

亀山由美は...もういないのだから。

しかし、どう言おうとも、この件はひとまず決着がついたと言える。

そして、田口優里を安心させたのは、松下牧野が今は子供の世話に重点を置いていることだった。

今は家に子供の世話をする家政婦が一人だけ残っており、ベビーシッターは松下牧野によって全員解雇された。

彼の言葉によれば、子供がベビーシッターと接する時間が長いと、ベビーシッターに懐いてしまうからだという。

実際は、彼が子供と自分がより親密になることを望んでいるからだ。

彼の気を紛らわせることができるのはいいことだ。

唯一良くないのは、松下牧野が今では大小問わず何事も自ら手がけることだろう。

資産が何億あるかわからない大物経営者というよりも、完全に育児パパになっていた。

子供が食事をしたり寝たりする時間以外は、ほとんど松下牧野が世話をしていた。

野井北尾が帰ってきて子供を抱っこしようとしても、時間制限があった。

少し長く抱っこすると、松下牧野がやってきて子供を引き取り、野井北尾に休ませるためだと美化して言い訳した。

野井北尾は田口優里と二人きりで過ごす時間が増えた。

最初、野井北尾は特に意見はなかった。

確かにあの時期は本当に忙しかったのだから。

しかし野井純奈が生後3ヶ月になる頃には、彼女が人を見分けるようになったことが明らかだった。

松下牧野にしか抱かれたがらなかった。

野井北尾はこれに慌てた。

心の中ではすっぱい気持ちになった。

これは彼の小さな宝物なのに。

どうして自分に抱かせてくれないのだろう?

三井和仁の事業チェーンは多岐にわたり、資産も豊富だった。それに、ビジネス界の巨人の背後には、必ず複雑に絡み合った権力関係がある。

三井和仁は陰湿で冷酷で、常識に囚われない人物だが、彼がビジネスの天才であることは否定できない。

三井家は彼の手の中で、事業価値が何倍にも膨れ上がった。

かつてがどうだったかは言えないが、今や巨大な樹木のように成長していた。

その根は大地に広がっている。

彼を根こそぎ引き抜くことなど、容易ではない。