松下晴彦は静かに自分のことをしていた。
彼は絵を描くことと旅行が好きだった。
暇があれば友人たちとリュックを背負って山奥に入っていった。
時には十数日も連絡が取れないこともあった。
今回、松下牧野が東京に来たとき、彼は外出せず、家に閉じこもって数日間絵を描いていた。
松下牧野が田口優里と子供のために改装した別荘は、別の一軒だった。
松下晴彦は相変わらず以前の場所に住んでいた。
松下牧野が彼にくれる小遣いは、途切れたことがなかった。
今回の面会で、松下牧野は実は彼と相談したかった。会社を手伝いたいかどうか尋ねるつもりだった。
松下晴彦は言った:「お父さん、ご存知の通り、私はそういうことに興味がないんです。私には大きな志もないし、あなたのような父親がいて、養ってくれるなら、一生食客でいさせてもらえませんか?」
実際、松下牧野はずっと彼を可愛がっていた。
前の世代の恨みは、本来子供に押し付けるべきではない。
それに、どう言っても、彼は確かに松下晴彦を二十数年育ててきた。
感情はやはりあるものだ。
それに、彼は松下晴彦に財産も残していた。
その資産は、松下晴彦が一生食べて楽しむのに十分だった。
使い切れないほどだ。
しかし何と言っても、松下晴彦に他の野心がなく、純粋で善良なことに、松下牧野は安心していた。
これは彼がこの子をよく育てたことの証でもあった。
それに比べて、鈴木家の人々は、本当に松下牧野の心を冷たくさせた。
松下牧野が今回東京に戻ると、鈴木家の人々は当然注目していた。
彼らは松下牧野に会う方法を考えていた。
松下牧野は当然そのような機会を与えなかった。
彼は東京に三日間滞在し、野井純奈が恋しくてたまらなかった。
仕事がまだ終わっていなかったが、すべて信頼できる部下に任せ、急いで墨都に戻った。
小さな子は今では彼が直接面倒を見ていた。
松下牧野が離れた後、小さな子も慣れず、長い間泣いていた。
野井北尾があやしても、なかなか泣き止まなかった。
松下牧野から電話があると、彼らは子供が寝たとしか言わなかった。
子供が泣いていると知ったら、松下牧野はきっと東京から直接戻ってきただろう。
小さな子は本当に人懐っこく、松下牧野に懐いていた。