第495章 仕事に行きたい

三井和仁の状況について、田口優里はあまり詳しくなかった。

野井北尾が彼女の前でこの人物について話すはずもない。

田口優里も自分から詮索するようなことはしない。

しかし家族の会話や反応から、彼女は最近大きな出来事が起きていないことを感じ取っていた。

大きな出来事がないということは、すべてが順調だということ。

それはつまり、三井和仁の状況が、あまり良くないということを意味していた。

「彼はどうしたの？」田口優里は尋ねた。

田村若晴は言った：「どうやら八方塞がりの状態みたいね。あなたの野井北尾、すごいわね」

田口優里は微笑んだ：「ビジネスは戦いのようなもの、勝敗は兵家の常というじゃない？」

「あなたは気楽ね」田村若晴も笑った：「もし野井北尾が負けたらどうする？」

「それなら...私が彼を養うわ」田口優里は言った：「私の医術はまあまあだし、田村叔父さんは私と年俸制の契約を結び直したいと言ってるから、家族を養っていけるわ」

そのことについて、田村若晴は尋ねた：「あなた、仕事に戻る準備をしてるけど、野井北尾は同意してるの？」

同意するわけないじゃない。

田口優里はこの件について言い出す勇気すらなかった。

通常、産休は3ヶ月ちょっとで、良い職場なら半年くらいある。

野井純奈ちゃんはもう4ヶ月を過ぎ、田口優里は自分の体調が十分回復したと感じていた。小さな子も規則正しく母乳を飲んでいた。

仕事に復帰することは全く問題ないはずだった。

しかし明らかに、家族はそう思っていなかった。

野井北尾に至っては、彼女がまだ仕事に戻るということを考えてもいなかった。

前回、田口優里が食卓でちらっと言及したとき、亀山お爺さん、二人の叔父、松下牧野、野井北尾、そうそう、その日は野井由紀もいた。

彼らは一斉に彼女をじっと見つめた。

田口優里は怖くて一言も言えなくなった。

だから今に至るまで、田口優里は言い出せないでいた。

聞くまでもなく、言っても彼らは同意しないだろう。

「じゃあ、あなたはこれからもう仕事しないの？」田村若晴は尋ねた。

「そんなわけないでしょ」田口優里は言った：「私は年俸制の契約を結んでるのよ、約束は守らないと」