奥田梨子は突然抵抗をやめ、まるで諦めたかのようだった。
土田才戸は彼女が大人しくなったのを見て、また薬を飲ませた。
この強い薬の効き目はすぐだった。
彼が彼女への拘束を少し緩めた瞬間。
奥田梨子はズボンのポケットから鋭い小刀を取り出した。
素早く、容赦なく、正確に自分の腕を一刀切りつけ、頭をはっきりさせた。
生きたショーを見ようとしていた観客の中で、臆病な者たちは悲鳴を上げた。
「あっ!彼女が自殺した。」
奥田梨子は小刀を土田才戸の首に突きつけ、唇をなめながら、かすれた声で言った。「土田さん、一緒に死にましょう。あの世で一緒に遊びましょうか?どうですか?」
土田才戸というこの臆病者は恐怖で小便を漏らした。
もし早くからこの女が薬を飲んでもこんなに命知らずだと知っていたら、先に縛っておいたのに。
「刀を下ろせば、お前を行かせてやる」彼は震えながら言った。
「嫌よ、下ろしたらまた私に嫌がらせするでしょう。私をバカだと思ってるの?」
彼女の手の小刀がさらに一歩前進し、土田才戸の首から瞬時に血が出た。
そのとき、個室のドアが誰かに押し開けられた。
黒いシャツを着た男性がドアの前に立っていた。
彼は片手で自分の携帯電話を振りながら、指にタバコを挟み、低い声で少し申し訳なさそうに言った。「自殺と叫ぶ声が聞こえたので、110番通報しました。」
辻本剛司を押さえつけていた数人の若い男たちは彼を放した。
辻本剛司は顔を引き締めて奥田梨子のところに駆け寄った。「奥田梨子、病院に連れて行くよ。」
彼は強引に土田才戸を引き離して奥田梨子を病院に連れて行くことはできなかった。
なぜなら奥田梨子の手の刀はすでに土田才戸の首に刺さっていたからだ。
奥田梨子は左手から血を流しながらも、土田才戸の髪をしっかりと掴み、右手に刀を持っていた。
彼女の視線はドアにいる男に落ちた。
畑野志雄は最近深谷市の病院に転勤してきたばかりで、リラックスしに出かけたところ、こんな場面に出くわすとは思わなかった。
彼は少し前にお酒を飲み、トイレに行った際、奥田梨子がある男性についてこの個室に入るのを見かけた。
彼女はその男性と会話をしており、知り合いのようだった。