第44章 彼の眼差しは冷淡だった

奥田梨子は数秒待って、やっと川木信行の返事を聞いた。「どこで食べる?」

この男性は彼女を見る目が変だった。

彼は何かを抑えているようだった。

しかし奥田梨子はそれを深く追求しなかった。重要ではないからだ。

彼の返事を聞いて、彼女は甘い笑顔を見せた。

女性の唇には鮮やかな口紅が塗られていて、彼女が笑うと、赤い唇が豊かに見えた。

頬は薄く赤らんでいた。

川木信行は表情を変えずに視線をそらしたが、彼自身だけが一瞬の感動を感じたことを知っていた。

ほんの一瞬だけだった。

奥田梨子が交通事故に遭った時、彼はとても辛かったような気がしたが、それは彼らが4年間一緒に過ごしたからかもしれないと思った。

ただの習慣だったのだろう。

川木信行は前を歩いていた。彼の歩幅は大きかった。

奥田梨子はハイヒールを履いていたので、大股で歩くのは不便で、彼女は後ろからついていくのに少し息が上がっていた。