奥田梨子は車のドアを開けて助手席に座った。
黄田毅は車を始動させ、「山田さんと畑野さんが一緒に立っているとよく似合いますね」と言った。
奥田梨子はバックミラーから視界から徐々に消えていく別荘を見つめ、目を赤くしながら小さな声で言った。「二人は確かに似合っています」
二人が長く一緒にいるためには、相性が合うことが必要だ。
絵は届けられ、奥田梨子は鈴村烈に電話をかけ直す必要があった。
電話の向こうの男性の声は荒い息遣いだった。
奥田梨子は言葉に詰まり、「すみません、お邪魔しました。絵はお届けしました」と言った。
鈴村烈は彼の上に座っている奈ちゃんに一旦止まるよう言い、かすれた声で「ああ、明日の午前中は用事があるから、オフィスには行かない」と言った。
「わかりました」奥田梨子は電話を切った。