第51章 雰囲気が一瞬止まった

朝、家政婦が一つの小包を持ってきた。

「旦那様、お荷物が届いております。」

川木信行は小包に貼られたメモの筆跡と、差出人の名前を見た。奥田梨子からだった。

彼は小包を開け、中の人形を見て、それを川木貝子の部屋に置くよう指示した。

涼宮陽子が階段を降りてきて、ちょうど川木信行の言葉を耳にした。

彼女は使用人の手にある精巧な人形を見て、笑いながら尋ねた。「これは誰が貝子にくれたプレゼント?とても精巧で可愛いわね。」

「奥田梨子が貝子にくれたプレゼントだ。」

川木信行はそう言うと、執事から渡されたコートを腕にかけ、「仕事に行ってくる」と言った。

涼宮陽子は奥田梨子という名前を聞いて怒りを抑えながらも、にこやかに川木信行の頬にキスをした。「私もこれから行事に参加するわ。」

彼女は川木信行が車に乗り、車が走り去るのを見送った後、クライアントルームに入り、階段を上って娘の部屋へ向かった。

涼宮陽子はその人形を手に取り、爪で人形の目を凹ませた。

彼女はそれを持ってバスルームに入り、蛇口をひねって水をかけた。

人形の頭が水で濡れてしまった。

涼宮陽子は冷たい表情で、それを持ってバスルームから出て、床に投げ捨て、家政婦を呼んだ。

「人形が貝子のおしっこで濡れてしまったわ」と涼宮陽子は娘のおむつを替えながら言った。「これを捨ててちょうだい。もし旦那様が尋ねたら、貝子のおしっこにやられたと言って。」

「はい。」家政婦は人形を持って出ようとしたが、また呼び止められた。

「床もきれいに拭いて、汚いわ。」

家政婦は承知して、部屋を出た。

一方その頃。

川木信行が乗った車が帝景マンションを出てからまもなく、助手席に座っていた辻本剛司が振り向いて今日の予定を伝えた。

「社長、今日の10時に遠藤テックで山田社長と提携の件について話し合いがあります。」

川木信行は携帯をスクロールしていた手を止め、「ああ」と答えた。

両社間の提携は、株式、利益、支出、リスクなどの問題に関わってくる。

9時半頃。

川木家側の人間が車で遠藤テックのビル前に到着した。

車のドアが開く。

川木信行は黒いシャツに白いスーツのズボンを身につけて車から降り、顔を上げると奥田梨子が見えた。