第50章 異常に鮮明

駐車場はより静かになった。

男の息遣いと女の喘ぎ声が、異常なほど鮮明に聞こえた。

畑野志雄は少し体を引き、シャツの襟元はすでに引き裂かれて開いていた。

彼の表情は少し冷たく、いくらか荒々しさを帯びていた。

畑野志雄は目を伏せて奥田梨子の迷った瞳を見つめた。

彼女は先ほど彼のことを信行と呼んだ。

畑野志雄の瞳は深く沈んでいた。

彼は彼女を抱き上げた。

「ドアを開けろ」

彼の声はかすれ、冷たかった。

ボディーガードが走ってきて、そちらを見る勇気もなく、ドアを開けた。

畑野志雄は奥田梨子を抱えて身をかがめ、車内に座った。

「誠心へ行け」

奥田梨子が住んでいるマンションは誠心と呼ばれていた。

車は発進し、駐車場を出た。

窓の外の街灯の光が少しだけ車内に差し込んでいた。

明るくなったり暗くなったり。