駐車場はより静かになった。
男の息遣いと女の喘ぎ声が、異常なほど鮮明に聞こえた。
畑野志雄は少し体を引き、シャツの襟元はすでに引き裂かれて開いていた。
彼の表情は少し冷たく、いくらか荒々しさを帯びていた。
畑野志雄は目を伏せて奥田梨子の迷った瞳を見つめた。
彼女は先ほど彼のことを信行と呼んだ。
畑野志雄の瞳は深く沈んでいた。
彼は彼女を抱き上げた。
「ドアを開けろ」
彼の声はかすれ、冷たかった。
ボディーガードが走ってきて、そちらを見る勇気もなく、ドアを開けた。
畑野志雄は奥田梨子を抱えて身をかがめ、車内に座った。
「誠心へ行け」
奥田梨子が住んでいるマンションは誠心と呼ばれていた。
車は発進し、駐車場を出た。
窓の外の街灯の光が少しだけ車内に差し込んでいた。
明るくなったり暗くなったり。