帝景マンション。
ソファーの上の二人は、愛の営みを終えたばかりだった。
「隣で風呂に入ってくる」
川木信行はタバコに火をつけ、バスローブを軽く羽織り、ソファーの上の涼宮陽子を一瞥した。
その瞳は冷たかった。
涼宮陽子はそれに気づかなかった。
川木信行は寝室を出て行った。
涼宮陽子は唇を噛み、突然なぜか切なくなった。
どうして彼は彼女を抱きかかえて風呂に入れてくれないのだろう。
彼女は全身疲れ果てて動けなかった。
川木信行は隣で風呂に入り、そのまま隣の部屋で寝るつもりだった。
彼は指輪をベッドサイドテーブルに適当に置き、ベッドに寄りかかりながら、電話の相手と畑野志雄への対策について話し合っていた。
畑野志雄には今、弱点がある。それは奥田梨子だ。
*
畑野志雄は早朝、病院からの電話を受けて救急室に駆けつけた。