第76章 私が養うの?

畑野志雄の胸を突かれ、彼は仕方なく目を開けた。

表情は少し怠そうだった。

彼は腕の中の奥田梨子も起こした。「仕事に遅れるよ」

昨夜二人は最後まで激しく愛し合った。

奥田梨子はもう耐えられず、明日の朝に会議があるという理由をでっち上げて、彼に急ブレーキをかけさせた。

本当はまだベッドでごろごろしていたかった奥田梨子だが、鈴村烈からの電話一本で起きざるを得なかった。

鈴村烈は彼女に今日早く会社に来るよう催促した。

川木家の人間が会社に来るという。

遠藤剛と川木家は競争関係でありながら協力関係でもあるのだから仕方ない。

「仕事したくないなら、俺が養ってやろうか?」

畑野志雄はすでに起き上がり、長い指でボタンを一つ一つ留めながら、奥田梨子を横目で見た。

奥田梨子は目を細め、あくびをした。「いらない」

彼女は布団を抱きながら起き上がった。

畑野志雄は腕時計をつけ、彼女に近づき、肩から滑り落ちたキャミソールのストラップを元に戻した。

少し熱い指先が奥田梨子の艶やかな肩に触れた。

奥田梨子は身を縮め、すぐにベッドから降り、立ち上がった。

膝がふらついた。

畑野志雄は急いで手を伸ばして彼女を支えた。

「........」

畑野先生は厚かましく、「これはあなたの男が体力も腕前も道具も良いという証拠だよ」

奥田梨子、「ふん」

彼女はしばらく休み、彼に手を放すよう言った。

畑野志雄は彼女が仕返ししそうな様子を見て、微笑んだ。「先に仕事に行くよ。朝食を食べてから出勤するんだよ」

彼は大股で寝室を出て行った。

奥田梨子、「........」

この男は本当にやるな。

帝景マンション。

辻本剛司が川木信行を迎えに来て、ついでに涼宮陽子に以前彼女が調べてほしいと言っていた楽田知寄のことを伝えた。

「我々の人間は彼女についての情報を何も見つけられませんでした」

涼宮陽子は眉をひそめた。「本当に誰なのか分からないの?」

辻本剛司はうなずいた。「はい」

「分からないならそれでいいわ。ありがとう、辻本秘書」

「どういたしまして」

川木信行は階段を降りてきた。表情は冷たく、昨夜あまり休めなかったようで、目には血走りが見えた。「行こう」

涼宮陽子は川木信行たちが去った後、天田さんにメッセージを送った。