畑野志雄が服のボタンに手をかけたとき、奥田梨子の携帯電話が鳴った。
彼は電話を切ろうとした。
しかし奥田梨子に止められた。
賀来蘭子からの電話だった。
賀来蘭子はビリヤード場に誘っていた。
姉妹の絆より大事なものなんてない。
男は一時的に後回しにできる。
奥田梨子は承諾し、電話を切った後、不機嫌そうな顔をした畑野志雄をなだめてようやく帰らせた。
彼女は急いでドレスに着替え、車を運転してビリヤード場へ賀来蘭子と合流しに向かった。
「梨さん、待ってたよ」
賀来蘭子が小さな手を振った。
ビリヤード場は今夜、賀来蘭子が貸し切っていた。
男女問わず、身につけているもの、手に着けているものはすべてブランド品だった。
ここにいる人たちは皆、セレブサークルの金持ちの若者たちだ。
奥田梨子は一瞥して、これらの人々の何人かは以前川木信行とパーティーに出席したときに会ったことがあると思った。