会社にいた奥田梨子は山田青子からの電話を受け、少し不思議に思った。
山田青子が鈴村烈のお母さんが彼女と話したいと言っていると伝えたとき。
奥田梨子は眉を上げ、疑問に思いながら「いいですよ、明日の午後6時で」と言った。
山田青子はオークションハウスから届いたアクアマリンのネックレスを見ながら、微笑んで「ありがとう、奥田秘書、このことは烈さんには言わないでくださいね」と言った。
「わかりました」奥田梨子はまだ何の話かわからなかったので、もちろん余計なことは言わないつもりだった。
二人には他に話すことがなかったので、電話を切った。
奥田梨子は取締役会長室の方を向き、眉を上げた。彼女は書類を持って部屋に入った。
鈴村烈は電話中だった。
奥田梨子が書類を置くと、鈴村烈は電話をしながら書類を開き、素早く目を通して署名した。
「賀来さん、今晩6時頃にはお迎えに行けると思います」鈴村烈は電話の相手から了承を得た後、電話を切り、書類を奥田梨子に渡した。
賀来さん?
どの賀来さん?
もしかして蘭子のこと?
奥田梨子は書類を受け取り、少し疑問に思ったが、これはプライベートなことなので、余計な質問はしなかった。
今日の仕事が終わったら、奥田梨子はあの探偵の藤原さんに会いに行かなければならなかった。
二人はまた個室で会う約束をしていた。
藤原さんは奥田梨子に書類の入った封筒を渡し、ゆっくりと言った。「奥田さんが調べたかった情報はすべてここに入っています。それと、おまけに一つ無料で教えておきますが、涼宮さんがずっとあなたの孤児院での出来事を調査しているようです」
奥田梨子は眉を上げ、微笑んで「ありがとうございます」と言った。
藤原さんが先に個室を出ると、奥田梨子は書類の入った封筒をバッグにしまい、その後マスクをつけて個室を出た。
*
深谷市、街灯が灯り始めた頃。
奥田梨子が家に帰ると、濃い焦げ臭いにおいがした。
彼女は顔色を変え、靴を脱ぐ暇もなくキッチンに駆け込んだ。ちょうどそのとき、畑野志雄がキッチンから出てきた。
奥田梨子は畑野志雄の胸にぶつかった。
幸い彼女の反応は早く、頭をぶつけずに済んだ。
畑野志雄は眉を上げ、彼女を抱きしめ、彼女の腰をつまんで「抱きついてきたの?」と言った。