第104章 死者

畑野志雄は奥田梨子が木村玉子に会いに行くと聞いた。

「ボディーガードを連れて行きなさい」畑野志雄はやはり心配で、「私も一緒に行くよ」

奥田梨子も木村玉子が罠を仕掛けているのではないかと心配していた。

だから彼女は木村玉子との待ち合わせ場所を公園に指定した。

公共の場所なら、木村玉子が何か企んでも大丈夫だろう。

「いいわ、一緒に来てください。ありがとう、畑野さん」

木村玉子は公園のベンチに座って奥田梨子を待っていた。彼女は奥田梨子が警戒していることを知っていた。

しかし奥田梨子は想像もしていないだろう、彼女は公園で何かをするつもりはないということを。

木村玉子は軽く笑みを浮かべた。

今日彼女はレトロなワンピースを着て、両手に白い手袋をはめ、華やかな雰囲気を漂わせていた。

木村玉子は顔を上げ、歩いてくる奥田梨子を見た。

奥田梨子の隣には男性がいた。

彼女の視線は畑野志雄の顔に落ちた。

とても端正な顔立ちの男性だった。

木村玉子は内心、奥田梨子を妬ましく思った。「お姉さん、この秘密はあなただけに話すわ」

つまり奥田梨子の隣にいる男性はまず離れなければならないということだ。

畑野志雄は木村玉子をさっと冷たく見た。たったその一瞥で、木村玉子は冷気を感じた。

奥田梨子は畑野志雄に少し離れるよう頼んだ。彼はまだ彼女を見ることができるが、声は聞こえない距離だ。

離れる前に、畑野志雄は手に持っていた黒い大きな袋を奥田梨子に渡した。

木村玉子の瞳が微かに光った。「お姉さん、現金は持ってきた?」

木村玉子は奥田梨子に50万円の現金を要求し、残りの金額は銀行口座に振り込むよう言っていた。

「ここよ」奥田梨子は黒い袋を木村玉子に渡した。「まず秘密を話して、それから振込みするわ」

木村玉子は微笑んだ。「いいわよ、一枚の写真を見せるわ」

彼女はハンドバッグを開け、中から一枚の写真を取り出し、奥田梨子に渡した。

「お姉さんは本当に年上の男性に好かれるのね。これは大谷さんの書斎で見つけた写真よ」

奥田梨子は写真を手に取り、一目見た。

わいせつな写真だった。

彼女の表情は一瞬で冷たくなった。

木村玉子は写真を取り戻し、軽く笑った。「お姉さん、心配しないで。これはAIで合成した顔入れ替えの写真よ。本物じゃないけど、よく似てるでしょ」