川木財団。
「つまり、これからずっと私に貝子に会わせないつもりなの?」
涼宮陽子は顔色が青ざめ、涙を浮かべながら川木信行を見つめた。
彼女は奥田梨子に頭をトイレに押し込まれてから、吐き気で二日間まともに食事ができなかった。
人もやつれてしまった。
今日、川木貝子の世話をしている家政婦が帝景マンションに荷物を取りに戻った。
そこで彼女は川木信行が貝子を今後ずっと緑川マンションに住まわせることに決めたと知った。
涼宮陽子は川木信行に電話をかけたが、ずっと通じなかったため、直接会社に彼を訪ねることにした。
「貝子に会いたいなら、私は止めないよ」と川木信行は淡々と言った。「でも緑川マンションには入れないし、毎回会うときは家政婦が同席する必要がある」
まるで泥棒を警戒するようだった。
涼宮陽子はまばたきをして、かすれた声で詰まらせながら言った。「どうしてそこまで私をひどく扱うの?」
辻本剛司がドアをノックし、川木信行の入室を促す声を聞いて、ドアを開けてオフィスに入った。「社長、株主総会の時間が近づいています」
川木信行は冷たく涼宮陽子を見て言った。「自分から出て行くか、それとも警備員を呼ぶか?」
涼宮陽子は唇を噛んだ。警備員に追い出されるわけにはいかなかった。
川木信行は冷淡に涼宮陽子の去っていく背中を見て言った。「対外的に、私と涼宮陽子の婚約解消を発表しろ」
森田綺太の方はもうほぼ準備が整っていた。
畑野志雄を国外に誘い出せば、彼はまだ残りの人生で奥田梨子を取り戻すチャンスがある。
*
涼宮家の会社は最近、涼宮陽子と川木信行の婚約により、業務も明らかに急速に成長していた。
業務担当は涼宮陽子のいとこの涼宮満成だった。
涼宮満成はこれまで顧客に会うときはいつも頭を下げて酒を飲み交わしていたが、今では顧客が彼に敬意を示すようになった。
まさに春風得意だった。
ウェイターが酒を運んできて、涼宮満成はそのウェイターを一瞥した。少し見覚えがあった。
彼はウェイターの服の名札を見た。木村栄。
なんと、木村栄は川木社長の元妻の継父の家族ではないか?
こんなに落ちぶれたのか?
涼宮満成はいとこが川木社長と復縁したと知ってから、奥田梨子側の人々について調査させていた。
木村栄は酒を置いた。