第157章 書斎

「畑野さん、スーパーに行って私のために何か買ってきてくれる？リストを作るわ。」

奥田梨子は自分の肩に置かれた手を払いのけ、偽りに腰に手を当てながら、ペンと紙を取りに行った。

男は彼女が腰に手を当てる仕草を見て、口元を軽く引き締めた。まるで七、八ヶ月の妊婦のように振る舞っている。

奥田梨子は買うべきものをたくさんリストアップした。細々としたもので、とにかく彼がスーパーから戻ってくるまでに少なくとも1時間はかかるだろう。

彼女はリストを書き終えると、笑顔でメモを畑野志雄に渡した。「早く行って、買い物が終わったらすぐに帰ってきてね。」

畑野志雄はソファにだらしなく寄りかかり、漆黒の瞳で奥田梨子を見つめていた。彼はリストを受け取って一目見た。日用品や果物などが書かれていた。

「早く行って」と奥田梨子はテレビを見続けながら、クッションで彼の足を促した。「どうしてこんなに怠け者になったの？前はすごく勤勉だったのに。」

今はどうこう、昔はどうこう。

男はこの比較を聞いて頭が痛くなった。うるさく催促されて嫌になり、車のキーを取って立ち上がった。「わかったわかった。」

奥田梨子は男が出て行くのを待って、書斎に向かった。

彼がスーパーからそう早く戻ってくることはないだろう。

彼女は書斎に入り、パソコンデスクの椅子に座った。畑野志雄のパソコンを開こうとしたとき、机の上に充電中の携帯電話が置いてあるのに気づいた。

この携帯は男が新しく買い替えたもので、以前使っていたものとは違った。

奥田梨子は理由もなく、その充電中の携帯に手を伸ばした。

携帯はパスワードロックがかかっていた。彼女は2回試してもパスワードが間違っていたが、諦めかけたときに適当に入力した組み合わせでロックが解除された。

奥田梨子は一瞬唖然とした。

彼女は携帯のホーム画面に映る監視カメラの映像を見て愕然とした。

監視カメラの映像からは、彼女が書斎に座り、携帯を手に持って驚いている様子が映っていた。

書斎のドアが、カチッという音を立てた。

ドアが外から押し開けられた。

*

奥田梨子はドアの開く音を聞いて、驚いて顔を上げ、入り口を見た。

スーパーに出発したはずの男が戻ってきていた。