鈴村家の旧宅。
岸本綾華と則木芳美は今回の帝都市行きについて話し合っていた。鈴村家としては山田青子に面目を潰させるわけにはいかず、当然双子に良い贈り物を送らなければならない。
話し合いが終わると、岸本綾華はお茶を飲みながら何気なく尋ねた。「お姉さん、烈の嫁候補は決まったの?」
則木芳美はため息をついた。彼女も悩んでいた。二人の息子のどちらも結婚する気がないのだ。「まだよ。私が気に入った子を、あの困った息子が気に入らないの」
「実は私、候補がいるんだけど」岸本綾華はお茶を置き、少し躊躇した後で言った。「川木敏子という子がいいと思うの」
則木芳美は一瞬言葉を失った。「彼女はダメよ」
岸本綾華は笑った。「そう言うと思ったわ。でも川木敏子を推す理由があるの。お姉さん、聞いてみて」
則木芳美はうなずき、話を続けるよう促した。
「川木敏子の家柄は私たち鈴村家と釣り合っているわ。それは皆知っていること。あの子、烈のことをとても好きそうだし、何より彼女は余計な駆け引きをしないタイプよ」
則木芳美は首を振って笑った。「彼女は将来、社交の場で鈴村烈の代表として立つことになるのよ。もし少しの機転も利かせられないなら、最終的に烈の顔に泥を塗ることになる。鈴村家の顔に泥を塗ることになるわ」
「社交のことなら教えられるわ。それに彼女の後ろには川木家があり、夫の家は鈴村家。深谷市で誰が彼女に嫌がらせをするというの?」
「ダメよ。彼女はあまりにも純粋すぎる。烈は好きにならないわ」則木芳美は自分の息子のことをよく理解していた。
岸本綾華はこれ以上この話題を続けなかった。
鈴村家の旧宅を出た後、彼女は電話で山田青子にこの件を伝えた。
山田青子は笑った。「もういいわ。彼らには縁がないのよ。私たち二家は姻戚関係を結ぶべきで、敵対するべきではないわ」
彼女は最近気分が良く、こんな小さなことで悩むつもりはなかった。
「山田さん、楽田さんがいらっしゃいました」使用人がドアをノックして山田青子を呼んだ。
山田青子の目が一瞬光った。「お母さん、今用事があるから、後でまた電話するわ」
彼女は電話を切り、身なりを整えて、階下へ楽田礼子に会いに行った。