サヤも小さな国の県城だ。
ここの朝の通りはそれほど賑やかではない。
森田綺太がここに一時的に住むことを選んだのも、ここが賑やかでないからだ。
彼は朝、奥田黛子を幼稚園に送り、帰り道に市場に寄って野菜を買う。
今夜は奥田黛子が嫌いな人参と卵炒めと、彼女が大好きな鶏もも肉を作る予定だ。
森田綺太は小さな袋に入った野菜を持って、ゆっくりと家に戻ったが、まだドアを開けて入っていなかった。
彼は突然何かに気づき、振り返ると、すでに囲まれていることに気がついた。
森田綺太は冷静に眉を上げ、「畑野志雄がお前たちを寄越したのか?」
河野民雄は黙っていた。
森田綺太は肩をすくめた。推測するまでもなかった。
彼はマスクを外し、眼鏡を取り、少し考えてから、突然理解した。なるほど……
この5年間、畑野志雄が彼を見つけられなかったことを、彼はかなり自慢に思っていたが、実は麻痺していたのは自分だった。