第185章 五年の忍耐

奥田梨子は病院を出ると、すぐに会社に戻らず、運転手に前方の「怠け者カフェ」に向かうよう指示した。

彼女は先ほど会った川木信行のことを思い出した。

奥田梨子はゆっくりと口元を歪め、彼を見るのは本当に吐き気がするほど嫌だった。

失ったものは失ったまま、なのに何を情熱的に元妻を取り戻そうとしているのか。

こういう男は純粋に自分勝手な感情に陥っているだけだ。

自己陶酔。

もう一つ言葉で表すなら、「下劣」だ。

車が止まった。

寿村秘書が振り向いて尋ねた。「社長、怠け者カフェに到着しました」

奥田梨子はカフェの方を見て、うんと頷いた。「少し座っていくわ」

寿村秘書が車から降りて梨子のためにドアを開けようとしたが、梨子は「必要ないわ」と一言言った。

彼女は今日シンプルなシャツとスーツのパンツを着ていた。背の高いスタイルで、カフェに入ると店内の何人かの客の視線を集めた。