「梨さん、泣かないで、黛子のあめちゃんあげるよ」柔らかく可愛らしい子供の声が耳に入ってきた。
賀来蘭子はすぐに涙を止めた。彼女は目を伏せて目の前に立つ小さな子を見た。はっきりとした黒い瞳が彼女を見つめていた。
賀来蘭子の心はとろけそうになった。彼女はかがんで奥田黛子という可愛い子を抱き上げた。
連れて帰りたい。
梨さんの家の子はあまりにも可愛すぎる。
「うちの黛子はとっても可愛いね、お菓子は黛子のために取っておくわ」
「黛子まだあるよ、梨さんに食べてほしい」
小さな子の熱心な勧めを断れず、賀来蘭子は嬉しそうにそのキャンディーを受け取った。
奥田梨子が畑野志雄と一緒にお風呂から上がって階下に降りてくると、賀来蘭子と奥田黛子がソファで一緒に遊んでいるのが見えた。
まるで二人の子供のようだった。