第273章 縁談を望む

林田麻美はエレベーターに乗り込み、中にまだ数人いるのを見て、すぐには畑野志雄を探さなかった。

彼女は彼が病院で涼宮梨花を見舞わずに、どこへ行くのか見てみたかった。

元々エレベーターの中にいた数人は、それぞれの階で次々と降りていった。

今やエレベーターには林田麻美と畑野志雄だけが残っていた。

エレベーターは12階に到着した。

畑野志雄が出て行った。

林田麻美も後に続いて出て、彼が病室に入るのを見た。

病室の外にはボディガードが立っていて、林田麻美は堂々と近づくことができず、他の病室を探すふりをするしかなかった。

彼女がBOSSが入ったばかりの病室の前を通りかかったとき、ちょうど中から看護師が出てきた。

彼女は好奇心があるふりをして中をちらりと覗き、BOSSがその女性にキスをしているのを見た。

林田麻美は心の中で少しショックを受け、その場で飛び込んで浮気男を罵りたい衝動に駆られたが、最終的には自制した。

畑野志雄は奥田梨子が彼のいない間に仕事を処理しているのを見た。

彼は手に持っていた袋を置き、椅子を引いて彼女のベッドの横に座り、「ゆっくり休んで、無理しないで」と言った。

一方、廊下で病室を探すふりをしていた林田麻美は、疑いを避けるために長く留まることを選ばず、12階を離れた。

エレベーターのドアが閉まると、林田麻美は深く息を吸い込み、怒りを感じていた。

もし涼宮梨花が浮気されていることを知ったら、どれほど傷つくだろうか。

親友のことを考えると、林田麻美はしばらくの間、涼宮梨花にこのことをどう伝えればいいのか分からなかった。

涼宮梨花は林田麻美が戻ってきたのを見て、驚いて尋ねた。「麻美、どうして戻ってきたの?」

林田麻美は椅子を引いて座り、複雑な表情で言った。「今日は姉さんが病院であなたに付き添うわ。」

彼女は親友の傷が癒えてからこの嫌な話をすることに決めた。

涼宮梨花は疑問に思いながら林田麻美を見た。「何か起こったの?」

林田麻美は首を振った。「何でもないわ、考えすぎよ。」

涼宮梨花は「そう?」と言った。

「あなたが一人で病院にいるのが可哀想だと思っただけよ」と林田麻美は冷ややかに説明した。

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賀来蘭子は急いで病室に入った。

奥田梨子を見た瞬間、彼女の心配は半分和らいだ。