第312章 パパとママ、痛い痛い

翌日の朝。

奥田梨子が会社に着き、車から降りたところで、突然駆け寄ってきた老婦人の悲痛な叫び声が聞こえた。

ボディーガードたちはすぐに老婦人を遮り、奥田梨子に近づけないようにした。

「お嬢さん、お願いです、私の孫を許してください。彼はまだ若いんです。どうか更生のチャンスを与えてください!」

向井大奥様は地面に跪き、声が枯れるほど泣き叫んでいた。

奥田梨子は老婦人の突然の行動に少し戸惑った。

どこの老婦人だろう?

今はちょうど出勤時間だ。

彼女は周囲を見回すと、行き交う従業員や通行人が足を止めて見ていた。事情を知らない人は奥田梨子が何か悪いことをしたと思うかもしれない。

奥田梨子は冷静にボディーガードに老婦人を助け起こすよう指示したが、老婦人は立ち上がろうとしなかった。

「まず立ってください。話があるなら落ち着いて話しましょう」奥田梨子は眉をひそめ、冷たい声で尋ねた。「あなたの孫は誰ですか?」

向井大奥様はすすり泣きながら言った。「奥田社長、私の孫は向井平次です。彼はもう自分の過ちを認めています。この老婆が頼みます、彼にチャンスをください、許してやってください。」

奥田梨子はやっと理解した。向井平次の祖母だったのか。

「あなたの孫は他人を唆して放火し、違法行為を行い、人を死なせました。私は裁判官ではありませんから、私に頼んでも無駄です」彼女は口元に冷笑を浮かべた。「この老婦人を警察署に連れて行きなさい。」

向井大奥様はそれを聞くと、顔色が一変した。彼女はもがきながら立ち上がり、奥田梨子を指さして罵り始めた。「あなたの将来の子供たちが不幸になるよう呪ってやる!あなたは私たち向井家の血筋を絶やした、あなたは報いを受けるでしょう!」

奥田梨子は向井大奥様の呪いを聞き、表情が一瞬で暗くなった。

彼女は会社に入りながら、振り返ることなく冷たく言った。「彼女を警察署に連れて行きなさい。」

ボディーガードはすぐに向井大奥様を車に引っ張り込んだ。向井大奥様は呪いの言葉を叫び続け、その声は悲痛だったが、突然声が途切れた。

老婦人の口はテープで塞がれていた。

奥田梨子はオフィスに戻り、内線で寿村凱を呼んだ。

「寿村秘書、ちょっと来てください。」