ガーディアンと憑依された漁師たち

彼はため息をついた。海は穏やかだった。潮風が塩の香りと静寂を運んでくる。しかし、高橋の胸の内には、何かが潜んでいる気がした──説明のつかない、漠然とした予感だった。佐藤恵美や、彼らの監視の背後にいる謎の人物だけではなく、この島そのものについても、何か不穏なものが感じられた。まるでこの土地には、ただの釣り場よりも深い何かが潜んでいるように思われた。

もともと晴れていた空が急変し、黒い雲が何の前触れもなく降りてきて、闇のカーテンのようにヘア島を包み込んだ。風が轟音を立て、穏やかだった海が荒れ狂い始める。波が桟橋の側面に打ち寄せ、自然全体が嵐の前に息を呑んでいるように感じられた。

高橋は桟橋の端に立ち、釣り竿を握ったままだった。彼は目を細め、本能が心よりも先に動いた。何かが来ている。何か、不自然なものが。

突然──

海霧の向こうから、二台のジェットスキーが弾丸のように飛び出してきた。その上には、ヘルメットをかぶり、黒い服で顔を覆った男たちが乗っていた。それぞれが、青いエネルギーの三叉槍を手にしていた。電光石火の動きでジェットスキーの進行方向を変え、高橋に向かってその武器を投げつけてきた。

しかし、高橋はすでに身構えていた。彼の手のひらが素早く持ち上がり、緑色に光る透明な盾が彼の前に出現し、エネルギーの層を形作った。両方の三叉槍がその盾にぶつかり、見えない壁に押されたかのように跳ね返って、水面に落ち、持ち主の元へと戻っていった。

彼らは止まらなかった。

二人の襲撃者はジェットスキーから飛び降り、捕食動物のような敏捷さでドックに着地した。彼らは何も言わずに攻撃を仕掛けてきた。高橋は生き延びていた──受け流し、退き、かわし続けた。しかしその人数は彼に圧をかける。ほんの数秒のうちに、彼は砂浜へと退かざるを得なくなっていた。

一発の強烈な蹴りが彼の腹部に入り、彼は転倒を余儀なくされた。襲撃者の一人が三叉槍を引き戻し、高橋の胸に突き刺そうとしていた。

ブルー……

男の体が弾き飛ばされ、砂の上に転がった。

横から山本が、嵐のように現れた。

「高橋、大丈夫か……!?」と息を切らしながら叫び、鍛えられた体を躍動させた。

「ありがとう、山本……大丈夫だ」

高橋は安堵して頷いた。これで戦況は五分──二対二。

だが、さらに奇妙なことが起こった。

桟橋で釣りに夢中だった漁師たちが、突然こわばったように立ち上がり、こちらに向き直った。彼らの目はうつろで、耳からはまるで制御されているかのように、黒いオーラがゆらめいていた。

高橋と山本は顔を見合わせた。

「取り憑かれてる……!」山本が囁いた。

最初に攻撃した二人の男たちは、再び武器を発動させた──三叉槍が変形し、外側には青い炎が灯り、中央には生きたプラズマのように黄色い光のコアが燃え上がっていた。

「気をつけろ、高橋!」山本が叫んだ。「俺がこっちは引き受ける!今すぐバイオエボリューションを解放しろ!」

高橋は深く息を吸い、目を閉じた。彼の体から放たれた緑のエネルギーが、手のひらに集まり、やがて光の姿をとって浮かび上がった。そして、憑依された漁師たちを一人ずつ抱きとめ、まるで聖戦の神話に登場する者のように包み込んでいった。

しかし、混乱は終わらなかった……

白い鷲が、桟橋の端にある木のブロックに静かに舞い降りた。その鋭い目が、彼らを見据えていた。

数秒後、また別のジェットスキーの音が波の向こうから響いてきた。一人の少女が姿を現し、ジェットスキーから飛び降りて砂の上に着地し、素早く彼らのもとへと歩いてきた。

「武器を構えろ!」と彼女が叫んだ。

高橋と山本は、一斉に顔を向けた。

「……!?」

少女は何も答えなかった。彼女は背筋を正して立ち、手のひらを胸の前で合わせた。その体から紫色のオーラが輝き、空中に渦巻く封印の印が浮かび上がり、風の渦が彼らの周囲で渦巻き始めた……

鷲の鳴き声に似た鋭い叫びが空気を裂き、続けて木々の陰から風が吹き抜けた。佐藤恵美は少しもたじろがず、憑依された漁師たちを正確に狙っていた。

ほんの数秒のうちに、彼らの身体は粉々に砕け散り、まるで内側からエネルギーが一瞬で吸い取られたかのように、次々と意識を失っていった。山本は素早く、そして正確に動き、巨大な緑の手で彼らを静かに砂の上に下ろしていった。

「まだ終わってない!」佐藤恵美が警戒を込めた声で叫んだ。

案の定、数秒後──薄い海の霧の向こうから、新たな人影が現れた。その姿は、最初に現れた二人の男とは異なる雰囲気をまとい、空中に浮かぶようにゆっくりと近づいてきた。

高橋はその場に立ち尽くした。彼の目は細まり、周囲には澄んだ光の痕跡が映っていた──それは、より高度で複雑、そして密度の高いバイオエボリューションの輝きだった。

「あいつらは……誰だ……」彼は独りごちた。

目の前に三人の人物が立っていた。紫のリボンを巻いた長い巻き毛の美女が、半ば嘲るように高橋を見つめていた。その両脇には、がっしりとした体格の若者と、背が高く痩せた猫背の若者が並んでいた。

「新しいメンバーってことね。お兄ちゃん、名前は?高橋……部分的には?」彼女が独り言のように言った。

「おかしいな……」高橋は身構えながら思った。

彼が答える間もなく、彼らはそれぞれの進化形態を解放し始めた。

ドラム缶のような男の姿が変化した。皮膚は硬い灰色の層となり、顔の中央からは鋼鉄の象の鼻のような突起が伸びていた。その隣の背の高い者は、血のように赤い光を放ち、身体全体が生きたニシキヘビのようなもので包まれていた。

だが、それよりも高橋の目を奪ったのは──

その女だった。どうやら彼らのリーダーらしく、夜の墨のような濃い紫の光を放っていた。彼女の顔は孔雀の仮面に変わり、優雅にして威圧的な雰囲気を纏い、輝く水晶の羽根の奥から一対の目がこちらを射抜いていた。

突然──

そのうちの二人が一斉に攻撃を仕掛けてきた。三叉槍が高速で回転しながら、高橋に向かって突き進んでくる。

彼の反射は鍛え抜かれていた。何も考えずに、高橋は前方に飛び出し、腕を交差させて空中で回転した。彼の両手のひらからは、黄金色と銀色のオーラが同時に輝いていた。

彼の手には、二つの武器が現れていた──右手には細い金の短剣、左手には稲妻模様の刻まれた銀のマチェーテ。

ドオオオオン……

激しい衝撃が巻き起こり、光は真昼の雷鳴のように爆発した。

その影響は壊滅的だった。二人の男は容赦なく跳ね返され、武器が高橋の力にぶつかった瞬間、彼らの体は地面に叩きつけられ、即座に意識を失った。

ためらうことなく、後列の三人の同僚が即座に反応した。倒れた二体と入れ替わるように、死体のように無表情なまま素早く動き、攻撃の構えをとった。しかし、山本と佐藤恵美も黙ってはいなかった。ふたりとも準備万端で、瞬時に防御の態勢に入っていた。

空気中に緊張が漂う。

突然……

どこからともなく、戦いの只中にいたパンダンハットをかぶった釣り人が、なぜかリラックスしているように見えた。彼はゆっくりと横に歩み寄り、それから顔を上げた。彼の視線はまっすぐに海を見つめ、次いで空を仰いだ。空は、いつの間にか再び晴れ渡っていた。

うううう……

大きなスピードボートのエンジン音が、静寂を破った。反射的に、全員の目が音の方向へと向けられた。ドックに近づく高速の水上車両だった。

たくましい男ふたりが船から降りてきた。彼らは何も言わず、気を失った二人の体を抱え上げ、スピードボートへと引きずり込んだ。他の三人の生物進化者は、奇妙なまでに整った隊列を保ったまま、その後に続いていた。

高橋は黙ってその様子を見つめていた。彼の視線は、スピードボートの運転手に釘付けになっていた。一瞬、彼は船のバックミラーに映る自分の顔を捉えた。

「あれは誰だ……」彼は静かに囁いた。

船は波をかき分け、やがて水平線の彼方に消えていった。

沈黙。

突然……

パンダンハットをかぶった漁師が、砂の中に身を沈め、息を切らしながら座り込んだ。

「ハディーー」

「お姉さん……!?」佐藤恵美が叫び、素早い足取りで男に近づいていった。

その間、山本は気を失った釣り人たちの介抱に努めていた。彼は彼らの状態を一人ひとり丁寧に確認し、間に合わせのテントの下に、静かに体を横たえていった。

その動きは落ち着いていたが、きわめて規律正しかった。体は微動だにせず、表情も最小限にとどめながら、すべてが整然と進められていた。軍人の姿勢だ──と高橋は感じた。それとは対照的に、パンダナスの帽子をかぶった漁師のダイチは、今では何の不安も感じさせることなく、パビリオンの支柱にもたれ、リラックスした様子で座っていた。

高橋は彼らのもとに歩み寄った。

「自己紹介する時間がなかったな」彼は手を差し出しながら言った。「俺の名前は高橋だ」

「リス。『さとうえみ』」佐藤恵美はパンダンビーニーハットをかぶったまま、いたずらっぽく言った。

「俺は……『だいち』」漁師はそう名乗りながら、佐藤恵美の冗談をやり過ごすように、軽く咳払いをしてみせた。

「話してる暇があるなら、さっさと駐屯地で任務を続けろ!」その日の午後に獲れた魚の束を運びながら、山本が突然怒鳴った。太陽はすでに西へ傾き始めている。そろそろ休む時間だった。

別の丸太にとまっていたクロワシが、翼を軽く羽ばたかせ、佐藤恵美の左肩にそっと着地した。

三人はゆっくりと、夜を過ごす監視所へ向かって歩いていった。山本は非常灯を点け、すぐにパビリオン内を照らした。大地は器用に電気ストーブに火を入れた。この保護区域では、直火の使用は禁止されているためである。

佐藤恵美は魚を洗っていた。巧みな手つきで最良の部位を切り取り、パビリオンの柵にとまっているワシに向かって放った。

「これが君の夕飯だ」彼は静かにそうつぶやいた。

ようやく日が沈む。空はオレンジ色に染まり、やがて静かに闇に包まれていった。支柱は今、屋根の隅に設置された非常灯だけが照らしていた。

釣り人たちが到着し始めた。お茶やコーヒーを求めてくる者もいれば、防水シートを広げてそのまま眠りに就く者もいる。島の監督官による夜間パトロールの順番を、静かに待っていた。

***

ワシが飛ぶ場所

朝は、温かなブドウの蔓のようだった。穏やかな水面の向こうから太陽が輝き、その光が水面に降り注いでいた。カモメたちは交互に急降下し、翼を広げながら、やわらかな風に吹かれていた。小魚たちは、朝のごちそうとして差し出されているかのようだった。

ジャワワシのつがいが岩の上にとまり、巣の手入れに忙しくしていた。乾いたマングローブの枝を、注意深く配置し直していた。今シーズン、彼らは幾度の嵐を越えてきたのだろうか。雄のワシの目は、魚の群れを見張りながらも、どこかうたた寝をしているようにも感じられた。雌のワシが羽ばたき、一度空に舞い上がったあと、二つの卵を抱いて温め始めた。その小さな命は、いずれ未来の空を舞うことになるかもしれない。

下では、ターポンの群れが入れ替わりながら獲物を待ち伏せしていた。穏やかで、とぎれとぎれの海のなかで、彼らは舞を踊るように身をくねらせていた。

雌のワシの目が、孤立して泳ぐターポンに向けられた。翼が大きく広がり、鋭い爪が突き刺さる。ターポンは岩の上へと引きずり込まれ、その命は尽きていった。その命の終わりは、やがて育まれる雛たちのための糧となった。

高橋は、まぶたに差し込む日差しで目を覚ました。彼の手の中のガジェットが「ハーフ6」と示しているのを確認し、「ハーフ6」とつぶやいた。

彼は急いで立ち上がり、誰にも見られないうちに忍び寄ろうとした。しかし、その意図はあっけなく消え去った。波止場では、すでに皆が再び釣りに集まっていた。彼の目は群衆の中をくまなく探り、山本の姿を見つけた。彼は何かに夢中になっているようだった。

「もっと近づいた方がいい」と高橋は思った。その朝の山本の行動が、妙に気になっていた。「何をしているんだ!?」と彼は叫んだ。

山本はその声に反応し、ゆっくりと目を開いた。「ボス、こっちに来て。私の動きについてきてください」と山本は懇願した。瞑想が五感を研ぎ澄ます機能であることを、静かに説明した。

高橋はうなずいた。彼の目は閉じられ、呼吸はゆっくりと整えられていった。静けさが、身体の内側から満ちてくるように感じられた。

「さあ、目を開けて。両手に、どんな武器が欲しいか想像してみてください」と山本が命じた。

高橋はゆっくりと目を開いた。昨日、無意識に現れた武器が、今ははっきりと頭に思い描かれていた。案の定、右手にはケリが、左手にはマチェーテがきらめいていた。

「呼吸をコントロールして……感情をコントロールしろ!」と山本は叫んだ。「この武器は、あなたの感情の現れです。感情をマスターすればするほど、光は強くなる!」

高橋は両方の武器を見つめた。ブレードの光はゆっくりと変化し、虹が明るくなっていくように見え、やがて銀と金が融合するように感じられた。

「ありがとう、山本。貴重な教訓だ」と高橋は言った。

「喜んでお手伝いします」と山本は答え、笑みを浮かべて小さく頷いた。

遠くから、パンダンハットをかぶった男が近づいてきた。「まあ!」と、大地が声をかけた。「龍」の愛称で呼ばれる、がっしりとした男だった。純粋なバイオエボリューションの最初の形態は、現在ではリンカ島周辺にしか残っていない古代の爬虫類、コモド島に端を発している。

「ねえ、今朝は何をしているの?」と、肩にかけた釣り竿を揺らしながら、大地が尋ねた。

高橋と山本は同時に顔を向けた。その友人の姿を見て、自然と笑みが広がった。

「ああ、呼吸法をしたり、感情をコントロールしてエネルギーを稼いだりしていただけだよ」と山本は答えた。

それから大地はふたりの間に座った。「岡本武教授は、まだエネルギーの合体について説明してないのですか?」と彼は尋ねた。

高橋と山本は顔を見合わせた。「それは何だ?」と、ふたりは声をそろえて尋ねた。

大地は、「エネルギーを組み合わせるというのは、バイオエボリューションの周波数を合わせて接続するということです。たとえば、私と佐藤恵美、森隆二の間には、それができる。私たちの周波数は同じなので、統一されたエネルギーを通じて、コミュニケーションが可能なのです」

「じゃあ」と、大地は目を輝かせて叫んだ。

時間を無駄にすることなく、ふたりの手のひらが融合した。高橋はすぐに奇妙な振動を感じた。川が流れ込むような感覚が、急速に身体の内側へと入り込んでくるようだった。その過程の中で、彼は大地に向き直った。「佐藤恵美はもう、俺のことを知ってるのか?」

「佐藤恵美は、昨日見た鷲の持ち主です」と大地は、目を細めて地平線を見つめながら言った。「鳥たちの生息地はこのあたりなので、彼はよくここを訪れます。私は名誉保護官として、固有種の動物個体数を監視する立場にあります」

「佐藤恵美は今どこに? 今朝は、まだ会っていないと思う」と高橋は再び尋ねた。

「彼は通常、この時間帯には、近くの小さな島にいます」と大地は答えた。「毎日通り過ぎる漁船に乗って」彼の指が、突然、東の一点を指した。「それだ!集中してみてください!」

高橋は意識を集中させた。ゆっくりと……佐藤恵美の温かいエネルギーが、燃えているように感じられた。それはまるで、彼が浜辺の砂に何かを書いている姿が、鮮やかに想像されるほどだった。彼の想像の中で、言葉が浮かび上がった。「おせっかいになるな!」

高橋はすぐに接続を切り、唇に苦笑いを浮かべた。