古川真雪は姿勢を慵懶に椅子の背もたれに預け、眉を少し上げ、やや苛立ちを見せながら白川思花を見た。「他に用?」
「古川真雪、あなた……」
「ん、ん。」
背後から突然聞こえた軽い咳払いに、思花の表情が一瞬で凍りついた。口に出かかった厳しい言葉を無理やり飲み込んだ。
彼女はゆっくりと振り返り、いつの間にか二人のテーブルに近づいていた綾部久辰を見た。その表情は……少し硬かった。
心の中で少し後悔した。真雪と言い争いをして久辰の前で取り乱してしまうなんて。先ほどの会話をどれだけ聞いていたのだろうか。
「あら、久辰。なんて偶然。」
「うん。」久辰は何事もないかのように頷いた。
「私が帰国してからずいぶん経つのに、まだちゃんと集まってないわね。今度あなたと子遠を誘って食事でもしましょうか?」
「うん。」
「じゃあ、また今度約束しましょう。友達が待ってるから、あなたと真雪の邪魔はしないわ。」
「うん。」
最初から最後まで、久辰は「うん」としか言わなかった。この冷淡な返事に思花はとても居心地が悪くなった。
彼女は急いでバッグを持って立ち上がり、久辰に友好的な笑顔を向けてから、その場を去った。
久辰は着ていたスーツの上着を脱ぎ、脇に置くと、自然な流れで先ほど思花が座っていたソファに腰を下ろした。
「白川思花は何かショックでも受けたのか?」
久辰がこう尋ねたのも無理はない。以前の思花は人前ではいつも清純で愛らしい姿を見せていたが、こんな攻撃的な態度は初めて見たからだ。
真雪は肩をすくめるだけで答えなかった。
店員が久辰の注文を取りに来た。真雪はソファに座ったまま、しばらく考え込むように久辰を見つめていた。久辰が耐えられなくなって口を開くまで。「姉さん、何を企んでるの?」
「久辰。」
「言ってみて。」
「私、イケメンを囲いたいの。」
「……!!」
久辰はコーヒーを一口飲んだところで喉に詰まらせ、上にも下にも行かず、明らかに真雪の言葉に驚いて呆然としていた。
やっとコーヒーを飲み込んだところで、真雪が真剣な顔で言った。「イケメンを囲いたいの。かっこよくて思いやりのあるタイプがいいわ。」
「姉さん、何かショックでも受けたの?」