浴室から足を踏み出した瞬間、彼女の耳に再び急いたドアベルの音が響いた。
相手は休みなくドアベルを押し続け、古川真雪がドアを開けなければ、彼女は嫌がらせを続けるつもりのようだった。
真雪はベッドサイドテーブルに歩み寄り、タブレットを手に取り、監視カメラを通して、酔っ払った夏目宣予と彼女を制止しようとする助手の千田景早が外に立っているのを見た。
「ふん」真雪は鼻で笑い、タブレットをベッドに投げ捨て、携帯を取り出して警備室に電話をかけた。
約3分後、家の中は再び静けさに包まれた。監視カメラを通して、真雪は三人の警備員が上がってきて夏目宣予と千田景早を退去させるのを見た。
景早は警備員を見るとパニックになり、バッグからマスクとサングラスを取り出して宣予にかけさせ、酔いでほとんど正気を失っている宣予を支えながら立ち去った。
真雪が今夜久保清森を泊めた唯一の理由は、おそらく彼に夏目宣予に会わせたくなかったからだろう。
嫉妬からではなく、ただ…彼女は宣予が嫌いで、彼女の思い通りにさせたくなかっただけだ。
客室にいる清森ももちろんドアベルの音を聞いていた。監視カメラがなくても、誰がドアベルを押しているのか想像できた。
先ほどの良い雰囲気が台無しになったこと、そして宣予の今の無礼な行動を考えると、清森は携帯を取り出し、叢雲エンタメの総支配人に電話をかけた。
電話の向こうの総支配人は、この時間に清森から電話を受けて明らかに驚いていたが、それを少しも表に出さなかった。
「取締役、何かご用件でしょうか」
清森は片手をスーツのポケットに入れ、もう一方の手で携帯を持ちながらガラス窓の前に立ち、下の賑やかな街を見下ろした。
その整った眉間には、いつもの冷淡さが宿り、薄い唇を開いて冷たい声で答えた。「宣予の活動については、今後はあなたの判断に任せる」
あなたの判断に任せる……
総支配人は心の中で少し驚いた。前回は清森が唐田浩良を通じて自分に、他のタレントと同じ態度で宣予に接するよう伝えてきた。
今回は直接電話をかけてきて、自分の判断に任せると言う。
これは明らかに、雲の上の高みにいる宣予を、思いきり蹴落とすということだ!
この転落で、宣予が耐えられるかどうかは分からない。