第217章：清森がどうして宣予を好きになるはずがない

電話を切ると、古川真雪は考え込むように携帯を持ったまましばらくぼんやりしていた。我に返ると、彼女は携帯のロックを解除して綾部久辰に電話をかけた。

田中監督の新作映画の主演は有名な俳優の陸橋宇央で、彼は久辰の親友の一人だった。真雪は久辰と一緒に明日、宇央の撮影現場を訪ねて、ついでに女優の夏目宣予と話をしたいと思っていた。

久辰は明らかに真雪が宇央の撮影現場を訪ねたいと思うとは予想していなかった。彼女が宇央に気があるのだと思い込み、渋い顔で言った。「姉さん、絶対に宇央に手を出さないでくださいよ！」

彼の言葉に真雪は訳が分からなくなったが、理解すると笑いながら言った。「何を考えてるの？私はただ宣予に会いに行くついでよ」

彼女がそう言うのを聞いて、久辰はようやく少し安心した。「あ、そうだ、姉さん、宇央から聞いたんだけど、宣予は田中監督にひどい目に遭わされてるらしいよ」

「え？どうしたの？」

「この数日忙しくてニュースも見てないの？誰かが新作映画のヒロイン役の田中糸叶が田中監督と****して役を手に入れたって暴露したんだ。

宇央が言うには、宣予がたまたま田中監督と糸叶がいい仲になっているところを目撃してしまったらしい。だからニュースが出た後、田中監督は当然、自分と糸叶の関係を目撃した宣予がわざとメディアにリークしたと思ったんだ。

今、彼女は撮影現場で毎日田中監督に怒鳴られるだけじゃなく、多くのシーンもカットされて、三番手女優の出番の方が多くなったらしいよ。

宣予は事務所の社長に不満を漏らしたけど、いつも彼女を持ち上げていた社長は彼女の不満を無視するどころか、以前彼女と清森の間に出た噂話のせいで彼女を罰して、本来彼女に予定されていた広告契約と二つのショーを他のモデルに回したんだって」

夏目宣予はずっと高い地位に祭り上げられてきたが、最近起こった一連の出来事は、まるで彼女を高みから引きずり下ろす暴風のようだった。

久辰から聞いたニュースは真雪を本当に驚かせた。「どうして、清森は…」

言葉が終わる前に、久辰に遮られた。彼は当然のように答えた。「もうわかるでしょ、事務所の彼女への態度は清森の態度を表してるんだよ。たぶん最近の噂で清森が不満を持ったんだろうね」

「清森は宣予のことが好きじゃなかったの？どうして急にこんな扱いをするの？」