第164章：初めてこんなに積極的に私をあなたの部屋に招待してくれた

「奥様、準備ができました」

白川悠芸は古川真雪の手の甲を優しく叩き、慈愛に満ちた口調で言った。「私とお婆さんはもう食事を済ませましたから、あなたと清森はさっさとお昼を食べてきなさい。たくさん食べるのよ」

「白川おばさん、私は…」

「私はこの後、友達とゴルフの約束があるの。もし暇なら清森に案内してもらって、どこかに出かけるといいわ」

「お婆さん、私は…」

「まあ、年を取ると本当に役に立たなくなるわね。ちょっと座っただけで背中が痛くなるなんて。田中おばさん、私の部屋で少し背中をもんでくれないかしら」

「はい、奥様」

白川悠芸と久保お婆さんは真雪が何を言おうとしているか察していた。二人は自然な形で言い訳を見つけてリビングを離れ、真雪に話す機会を全く与えなかった。

久保清森は自分の母と祖母が息を合わせて真雪を困らせる様子を見て、薄い唇の端に微笑みを浮かべた。漆黒の瞳にも自然と優しい笑みが広がっていた。

真雪は笑みを隠せない清森を横目で見て、黙ってキッチンへ向かった。

白川悠芸は真雪を3階、清森の部屋の隣に案内した。

真雪は夕食後に階段を上がると、無意識のうちに清森の部屋のドアの前で足を止めた。

過去11年間、彼女は何度もこの閉ざされたドアの前に立ち、中の人が自分にドアを開け、招き入れてくれることを願っていた。

真雪はかつて一生懸命に清森を追いかけていた。しかし彼の心は目の前のドアのように固く閉ざされ、彼女が入る余地も隙間も与えてくれなかった。

「入りたいのか？」

背後から突然、笑みを含んだ声が聞こえた。彼の声は優雅で清らかで、暖かい春風のように真雪の肌を優しく撫でていった。

真雪はその場に動かずに立ち、彼の足音が近づいてくるのを聞いていた。

次の瞬間、清森は彼女を追い越し、ドアノブを回して扉を開けた。

「入りなよ」

真雪はまだその場に立ったまま、静かな視線を清森から彼の背後の部屋へと移した。

「ふん、あなたと知り合って初めてこんなに積極的に部屋に招かれたわね。それなら遠慮しないわ」

彼女の口調は全く遠慮がなく、どこか傲慢さを秘めていた。

言い終わると、彼女は少しあごを上げ、優雅な足取りで部屋に入った。その姿勢からは世を見下すような傲慢さと高慢な態度が漂っていた。