第182章：あなたにキスしたいのは本当

古川真雪は藤野の後ろに続いていた久保清森を見た時、顔に驚きの表情を浮かべた。明らかに彼女も清森がなぜここに現れたのか分からなかった。

しかし一瞬の戸惑いの後、彼女は我に返り、スタッフたちに友好的な笑顔を向けて言った。「お疲れ様です。どうぞ、お食事をどうぞ」

数人がデリバリーボックスから食べ物を取り出し、テーブルに並べていくのを見ながら、スタッフたちは嬉しそうに笑って真雪にお礼を言った。「ご馳走様です」

皆が食事をしている間、清森は真雪に向かってかすかに目配せをした。

彼のことをよく知る真雪は、その微妙な視線の中に込められた意味を読み取った——静かな場所で話そう、と。

彼女はトイレに行くという口実でホールを離れた。その時、清森はすでにトイレの外の廊下で彼女を待っていた。

真雪はハイヒールを履いた足取りで優雅に清森に向かって歩き、ついに二人の間の距離が1メートルほどになった時、彼女は足を止めた。

彼女は清森をじっと見つめ、何事もないかのように尋ねた。「何か用？」

「昨夜の私と宣予がレストランでキスしているところを記者に撮られたことについて説明したくて...」

清森の言葉はまだ終わらないうちに真雪に遮られた。彼女は平然とした顔で清森に注意した。「清森、私たちは友達の関係でしかないわ。あなたが私に何かを説明する必要はないわ。あなたと夏目宣予がキスしたかどうか、ニュースが本当かどうかも私は気にしないわ」

彼女の冷淡で距離を置く態度は、確かに清森をイライラさせた。

彼女がニュースを見て誤解するのではないかと心配して、彼はわざわざ直接説明するためにここに来たのだ。

しかし、彼女が彼と宣予についてのゴシップにまったく関心を示さず、さらに彼を拒絶するような態度は...本当に彼を途方に暮れさせた。

清森は数歩前に進み、彼と真雪の間の距離を縮めた。

真雪は逃げることなく、少し顎を上げ、冷たい表情で彼を見つめた。

「昨夜は夏目宣予とニュースになったばかりなのに、今日はこんなに堂々とここに来るなんて、清森は二股をかける最低な男だと非難されても平気なのね」

とげのある言葉の中に、思わず軽蔑の色が滲んでいた。

清森は彼女の言葉と口調に少し不満を感じ、手を伸ばして真雪の細い腰に腕を回し、少し力を入れて彼女を自分の胸に引き寄せた。