第276章：真雪、イチゴを食べたい？

動画が公開された後、多くのネットユーザーは夏目宣予が屋上で古川真雪と口論になり、真雪が怒りのあまり宣予を屋上から突き落としたのではないかと推測していた。

真雪の唇の端には、かすかな邪悪な笑みが浮かんでいた。彼女はゆっくりと視線を横に向け、一人掛けソファに座っている久保清森に尋ねた。「清森、このニュースをどう思う？」

ニュースを見ている間、清森の顔は無表情だった。明らかにテレビで放送されているニュースに全く興味を示していなかった。

真雪が彼の名前を呼び、意見を求めた時になってようやく、彼は優雅に微笑んだ。

「宣予は間違った手を打ったね」

清森の真雪に対する理解からすれば、彼女が自分を傷つけるような愚かなことをするはずがなかった。

彼女には宣予に対処するための様々な方法があるのに、どうして最も愚かな手段を軽率に使うだろうか。

だから唯一の可能性は、おそらく宣予が自作自演の策略を仕掛け、真雪を陥れて名誉を傷つけようとしたのだろう。

それを聞いて、真雪は軽く笑い声を漏らした。彼女は興味深そうに清森を見つめながら尋ねた。「じゃあ、私の次の一手はどうすべきだと思う？」

清森は首を振り、整った顔立ちに優しく愛情のこもった笑みが広がった。まるで太陽が湖面を照らし、きらめく波紋を作り出すかのようだった。

彼は口を開いた。「僕が代わりに打とう」

「どうするつもり？」

清森は答えず、立ち上がって真雪の隣に移動し、彼女のすぐ横に座った。そして少し頭を下げ、彼女の耳元で静かに答えた。「久辰の隣人が彼に何年も片思いしていてね。彼のことを見守るために、自分の家の屋上に久辰の屋上を向いた監視カメラを設置したんだ」

綾部久辰の別荘の屋上には確かに監視カメラは設置されていなかったが、彼を何年も追い求めていたその熱烈なファンの家にはあった。

だから、昨夜の監視映像を取り出せば、これらのくだらない憶測はすぐに崩れるだろう。

彼が真雪に答えるとき、温かい息が彼女の肌に全て吹きかかった。

もともと白い肌が、彼の突然の親密な行動によって、薄いピンク色に染まった。

清森の輝く目に一瞬、悪戯っぽい光が走った。彼は姿勢を正し、視線をテレビに向けたまま、平然と尋ねた。「真雪、イチゴ食べたい？」

「うん、いいわよ。冷蔵庫にイチゴがあるから、行って...」洗ってきて。