第310章:あなたに何かあったら私はどうすればいい?

「古川様、大丈夫ですか?」ボディーガードは、ぶつかられた古川真雪を心配そうに見つめた。

真雪は頷き、眉をひそめながら相手の姿を見つめた。どこかで見たことのある顔だと思った。

相手の姿が視界から完全に消えるまで、真雪はようやく自分がどこでその人を見たことがあるのか思い出した。

以前、中島黙が夏目宣予について調査してくれた時、宣予の血縁関係のない兄である夏目維順の写真を見せてもらったことがあった。

さっき自分にぶつかってきた男性は、まさしく……維順だった。

ボディーガードの車が彼女の前に停まり、真雪は我に返って車に乗り込んだ。少し迷った後、携帯を取り出して久保清森にメッセージを送った……【今日、墓地に行ったら、夏目維順に会ったみたい。】

メッセージを送ってから2分も経たないうちに、清森からの電話がかかってきた。

「真雪、大丈夫か?」

電話の向こうから清森の緊張と心配が混じった声が聞こえてきた。

真雪は可笑しくなった。単に偶然維順に会っただけなのに、清森の口調はまるで自分が誘拐されたかのようだった。

「何ともないわよ」

「今どこにいる?」

「帰り道よ」

「うん、気をつけて。今から会社を出て車で君の家に向かうよ」

「仕事は?」

「あるけど、君に会いたいんだ」

真雪は思わず笑みを浮かべ、からかうように言った。「社長さん、随分わがままね。あなたも気をつけて運転してね、私は…」

言葉が終わらないうちに、ボディーガードが急ブレーキをかけ、真雪は慣性で前のめりになり、携帯をしっかり握れずに床に落としてしまった。

電話の向こうで突然大きな音がして、その後静寂が訪れた。清森は不吉な予感を覚えた。「真雪?真雪?」

彼は真雪の名前を二度呼んだが返事がなく、心配でたまらなくなった。唐田浩良に真雪の携帯の位置情報を確認するよう指示しようとした時、ようやく電話の向こうから再び真雪の声が聞こえてきた。

「ごめんなさい、今急ブレーキがかかって携帯を落としちゃったの」

彼女の声を聞いて、清森はようやく少し安心した。彼はさらに尋ねた。「何かあったのか?」

「ううん、ただ車の前を猫が走り抜けただけよ」

「シートベルトはしてる?」

「してるわよ。切るね、またすぐ会えるでしょ」