第296章：あの女は完全に悪毒、陰険、残忍だ

朝、多くの書店では開店前から、ドアの前に本を買うために待つ人々が集まっていた。書店が開くと、人々は我先にと店内に入り、夏目宣予の小説を買い求めた。

古川真雪は朝の7時過ぎに吉田語春の電話で目を覚ました。電話に出るとすぐに、向こう側から語春の激怒した声が聞こえてきた。「夏目宣予のあのクソ女、突然本を出すなんて良からぬことを企んでるって思ってたのよ。見てよ、あの本に何が書かれてるか。今ネットユーザーはあなたが第三者だって叩きまくってるわ。あなたが宣予と久保清森の間に割り込んだって」

語春の声があまりにも大きかったため、真雪は思わず携帯を遠ざけた。向こう側の語春が黙ったのを確認してから、再び携帯を耳に当てた。

彼女は眠そうに目を伏せ、はっきりしない口調で尋ねた。「他に何て言われてるの？」

「あなたが計算高い女だって。みんな宣予に同情してるわ。誰が本当に計算高いのかわからないわね。この小説はあなたを狙い撃ちするために書かれたんでしょ？」

「うん、たぶんね」真雪の声には鼻にかかった音が混じり、明らかにまだ目覚めていない様子だった。

「『あなたは私の一生やめられない温もり』だって。もう最悪。あの女は完全に悪意に満ちてる、陰湿で、残酷で、『温もり』なんて言葉とは一ミリも関係ないわ」

元々宣予が好きではなかったこともあり、また語春はいつも身内に甘いため、電話で宣予の悪口を言うのも遠慮なかった。

「わかったわ、反撃する方法を考えるわ」

「よく考えてね。どうしても思いつかなかったら私も知恵を貸すわよ」

真雪は思わず笑い、遠慮なく語春の本音を暴いた。「やめときなさいよ。あなたのアイデアといったら、きっと人を雇って彼女を消せって言うんでしょ」

真雪に本音を言い当てられ、語春は照れくさそうに笑った。「さすが、わかってるわね」

「もう二人の子供のママなんだから、もう少し落ち着きなさいよ。もう話すのやめるわ、今日は会議に出席しないといけないから」

「うん、じゃあ切るわね」

真雪は電話を切った後、微博にログインして確認してみると、『たとえ魚が水をやめても』が話題のトピックになっていた。

夏目宣予、久保清森、古川真雪、この三つの名前が検索ランキングの上位3位を占めていた。