第11章 お願いしてくれたから

食事時間が近づき、朝比奈初と長谷川一樹は張本のお祖母さんの家から出てきた。道中では各家庭の台所から立ち上る煙が見え、香ばしい匂いが次々と鼻をくすぐってきた。

朝食を食べていない二人にとって、この炊事の匂いは耐えられないものだった。空腹感はますます強くなり、三歩を二歩に縮めて早く家に帰り、食事を作りたい気持ちでいっぱいだった。

しかし家に戻ってからというもの、初と一樹はすっかりペースを落とし、軒下に座って涼んでいた。誰も食事の準備について言及せず、まるで怠惰で心地よい午後を過ごしているかのようだった。

【なんでまだ座ってるの?お腹空いてないの?料理しに行かないなんて】

【二人がこうして座ってるのを見ると、なぜか笑いたくなる】

【これは誰の忍耐力が優れているかを競ってるのかな?ハハハハ】

【朝比奈は平然としてるけど、一樹の方は内心では無数の蟻が這いまわってるんじゃない?ハハハハ】

【お互いにサボり合戦、誰がより徹底的にサボれるか勝負してるハハハハハハ】

一樹は料理が全くできないので、初が動き出すのを待つしかなかった。

二人が家に入ってから約10分が経ち、一樹は何度も初の様子をこっそり観察し、何度も「休憩は十分か、そろそろ料理を始められないか」と尋ねようとした。

気温が徐々に上昇するにつれ、何もしなくても太陽の熱意を感じることができた。

一樹は針のむしろに座るような落ち着かなさで、イライラが募っていた。

初は彼のすぐ隣に座っているのだから、頭を回せば話しかけられる簡単なことなのに、この単純な行動が彼の心の中で何度も葛藤し、口まで出かかった言葉をいつも飲み込んでしまうのだった。

しばらくして、一樹はとうとう座っていられなくなり、立ち上がってキッチンへ向かった。

【お坊ちゃんが先に動いたなんて、意外だわ】

【宣言します、この無言のサボり合戦は朝比奈の勝ちです】

【彼はこれから料理の腕前を披露するつもりなのかな】

【お坊ちゃんの作る料理なら、オークションにかけられるんじゃない?ハハハハ】

【オークションどころか、自分自身を毒殺しそうで怖いわハハハハ】

初はまだ目を閉じて休んでいるように見えたが、実は一樹が何に焦っているのか、そして彼が突然立ち上がって自分の横を通り過ぎたことも感じていた。彼がキッチンに向かったことは想像に難くなかった。