長谷川一樹が戻ってきた時には、太陽はすでに沈んでいた。
日が暮れる前に、朝比奈初は均等に混ぜた粉を平らに皿に広げ、それからゆっくりとナイフで小さく切り分け、乾燥させた桂花を少し振りかけ、蒸し布をかけて鍋に入れて蒸した。
30分後、最初の桂花蒸しケーキが出来上がり、続けて彼女は二つ目の蒸し器を準備した。
一樹が戻ってきたとき、キッチンからは湯気が立ち上り、甘く清らかな香りが彼の胃袋を目覚めさせた。
彼が中庭に入ると、初がすでに氷砂糖サンザシを作り終え、テーブルいっぱいに並べているのを見つけた。通りがかりに、彼はわざと立ち止まり、手を伸ばしてサンザシの串を一本取り、じっくりと眺めた。
【この子はお菓子が食べたいのかな、ははは】
【長谷川も朝比奈の美味しい料理の誘惑には勝てないみたいだね】
【長谷川、盗み食いしちゃダメ!早くそのアメリンゴを置きなさい、聞こえてる?】
【お坊ちゃまがもし一口食べたら、このキャラ設定崩れちゃうよねwww】
しかし、視聴者たちの予想は外れていた。
一樹は食べる気はなく、ただこんなに美しい氷砂糖サンザシが初の手によるものだということに驚いていただけだった。
彼はサンザシを元の場所に戻し、キッチンの方へ歩いていった。
キッチンに入るとすぐに、一樹の視線は出来立ての桂花蒸しケーキに引き寄せられた。
初は誰かが近づいてくるのを感じ、振り返って一瞥した後、また粉をこね続けた。
一樹は中に入り、何もすることなく一周した。
しばらくして、彼は初の側に来て、進捗を尋ねた。「あとどれくらい?」
「まだ桂花蒸しケーキが一鍋分残ってるの」
一樹は顔を上げて見ると、初が言う未調理の桂花蒸しケーキがコンロの横に置かれているのを発見した。彼女がまだ粉をこねているのを見て、眉をひそめて疑問に思った。「じゃあ今は何を作ってるの?」
「香ばしい小豆もち米ケーキよ」
【ああああ香ばしい小豆もち米ケーキ大好き!香ばしくてもちもちで美味しいよね、楽しみ!】
【このケーキ本当に美味しいよね、特に出来立てのアツアツの時、食感がサクサクでふわふわで最高!】
【朝比奈さんができないことって何かあるの?泣 たぶんないよね】
【朝比奈さん、スイーツショップ開いてみませんか?限定販売でも並びますよ!!】