朝比奈初はずっと船の航行効果を見ることができなかったため、彼女は一旦停止し、風向きを観察しながら、彼らが先ほど漕いでいた時の船の軌跡を思い出していた。
彼女は航行のパターンさえ見つければ、今の問題を解決できると確信していた。
長谷川一樹はすっかり漕ぐのをやめ、彼女と向かい合うように体を回転させ、オールを足元に置いた。
朝比奈初は船が激しく揺れるのを感じ、それが彼女の観察と判断に影響していると思った。
彼女は長谷川を見上げ、目に嫌悪感を浮かべながら言った。「動かないでくれる?」
一樹も船が転覆するのを恐れていたので、初に注意された後は動かないようにした。
朝比奈初のチームが止まった後、彼らは逆流に向かって進んでいたため、小さな木製ボートは水流の影響で後退し、他の2チームがリードすることになった。
他の2チームは技術をマスターしていなかったが、絶え間なく漕ぎ続け、風力を借りて船を前進させることができた。残念ながら、進路がかなり外れてしまい、修正しようとしていた。
【朝比奈さん、完全に諦めちゃったの?】
【この船、朝比奈さんの顔を全然立ててないねwww】
【朝比奈さんというキャリーも、運べないブロンズの坊ちゃまがいるんだねw】
【はい、お決まりの「諦めチーム」復活の瞬間】
一樹はすでに心を落ち着かせていて、勝ち負けにはこだわっていなかった。どうせ最後に到着しても住む家はあるし、選べないだけだった。
むしろ朝比奈初の方が、何かを真剣に見つめているようだった。
一樹は彼女が海面をじっと見つめているのを見て、思わず尋ねた。「何を見てるの?」
「解決策を探してるの。実は私たちの航行に影響しているのは水流だけじゃなくて、今日の風向きの問題もあるわ」
初は観察を通じて、頭の中でおおよその航行軌道を描いていた。「向き直って、次に漕ぐときは右側に重点を置いて」
「それで大丈夫?」
「やってみればわかるでしょ」
一樹は初の言うことを少し信じられない様子だったが、彼らはとにかく前進し続ける必要があった。
彼はオールを手に取って向き直り、初の指示通りに右側を重点的に漕いだ。
ライブ配信を見ている視聴者たちは、彼らのチームの小さな木製ボートが再び動き出し、今回は本当に前進していることに気づいた。
【船が本当に動いたよ!】